03.lover



「気持ちわかるわー」
「はァ?何の?」
「この歌の」


スピーカーから流れてくるポップな音楽。

銀時は意味がわからなかったらしく、もう一度「はァ?」を繰り返した。


「歌詞に共感できるって話!わかるわーそのきもちぃーってこと!」
「所詮他人が作り出したお話だろ。なんでそんなのに共感できるんだか。ホント女ってのはよくわかんねー」
「聞いてからいってよそーゆことは!ちゃらんぽらんな自分がよーくわかるよ」


私が突き出した歌詞カードをいやそうに受け取った銀時。ポイッと放り投げようとしたところににらみをきかせ、読めよ、と言えばビクッと震えて目を通し始める。


ホント、そっくりなんだから。
どこもつれてってくれないところとか、いつも答えが曖昧なところとか、こんなにずっと一緒にいるのに好きのひとこともいわないところとか。まぁつまりは、はっきりしてよ!っていう無言の訴えなわけなんだけど。


「…これってよー」


カードから顔を預けに銀時が言う。私が何、と言ってもなおカードを見たまま、まっすぐだった口が意地悪く孤を描いた。


「これ、お前がオレをこれだけ好きだよ!って話?」




「え…     えェェェェェェェェェ!!!!!」




銀時の手からカードを奪い取り文字を追う。まったくそんなつもりはなかったけど、確かにそんな風にも読めるような…って、読めたらだめじゃん!銀時に好きって言わせよう作戦だったのに!あれ、あー、え? 何か、もう…


「…恥ずかし」
「そーかそーかー。恥ずかしくなるほど銀ちゃんが好きかー」
「ち、ちがっ」
「ちげーの?」


覗き込んでくる銀時の顔は、笑っているのにどこか真剣で。こんなときばっかりこいつはこうなんだから、ホント頭にくるわ、もう。


「…ドS」
「そんなこと知ってるよー、ドMなちゃん」
「ドM言うなァ!」
「Sの方がよかった?あー、残念ねー、銀ちゃん痛いのきら
「そーじゃねーだろボケがァァァァァァ!」


また余計なことを言おうとした銀時に入魂チョップを食らわした。額をおさえてごろごろ転がる銀時は、なるほど打たれ弱いらしい…ってそうじゃなくって!




(「そーだよ」なんて悔しくていえない!)





(大阪LOVER)









2008.04.07 monday From aki mikami.