08.happy



「このCD、全部買ったんですよね」
「そーよ」


私の部屋で一番背の高いCDラックを、Lが指をくわえたまま見上げていた。私はそんな彼の隣に座り込んで新しいCDを整理する。


「今は買わなくても聞ける時代なのに…」
「買わないと好きな人にお金が落ちないでしょ。イコール活動できなくなるってこと。そー言うのはだめでしょ」
「エライですね」
「そう?」
「そうですよ」


無表情をこちらに向けたまま座り込む。何を考えているかは知らないが、どうやら手元のCDを見ているようだ。彼が私の好みに口を出したことはないけれど、あまりじろじろ見られるのはいい気がしない。そう思っていると、彼は小さくあ、とつぶやいた。


「え、何」
「それ…」
「これ?」
にしては珍しいジャケットですね。見せてもらっても?」
「いーけど…」


と答えるなり私の手からCDを奪い取り、開いて歌詞カードを取り出した。LにそのCDがあまりに似合わなくて笑えたけれど、考えないようにしてCDをラックに入れていく。


「…やっぱり、にしては珍しいですね、こういう選曲」
「そーかもねー」
「これ、今聞きたいです」
「どーぞ」


Lから曲を聴きたいなんて方が珍しいと思うんだけど、とは口に出さずに、LからCDを受け取った。お気に入りのパールホワイトのコンポにセットして再生ボタンを押すと、ポップで、でもどこか優しい旋律が流れ出す。










(シ/アワセ:aik/o)









2008.03.12 wednesday From aki mikami.