15.pink



「似合わネェ」


開口一番にそんな言葉を吐いた銀時に、私は左ストレートを食らわせた。


「いってェェェ!なにしやがんだこのアマァァ!」
「あんたこそ何言ってくれちゃってんだこの公害ヤロォォォ!」
「オメーのその格好の方が公害だっつーの!!」
「んだとコラァ!?口を慎め社会のゴミッッ!」
「オレがゴミならオメーはダイオキシンだッ!」
「あーもしそーならあんたのこと真っ先に殺ってやんよッ!」


お互いひとしきり言い合ったところでゼーハーと息をする。こんなになるまで言い合った原因は、私が来ているこの服を銀時があんな風にけなしたから…だけど、そんなにめちゃくちゃ言われるほど似合ってないつもりはないんですけど。


鏡に映る自分の姿は、確かにいつもとは違いすぎるけど…でも、こういうものは普段あまり着ないんだから普段選ばない色を着てみても…。それに、見慣れてないから似合わなく見えるだけってこともあるじゃない。


「…そんなに似合わないかなぁ」


似合うって言われるとは思ってなかったけど、せめて笑い飛ばすくらいにしてほしかった。考えているうちにだんだん落ち込んできて、さっさと元の服に着替えることにする。寝室に行く前に思い切り銀時をにらみつけてやる。乙女を傷つけた罪は重いんだぞコノヤロー!!


「……―――あ゛-、モォ!!」


ふすまを閉めようとした瞬間いきなりわめくから、びっくりして銀時を振り返る。どっしり落としていた重い腰を上げて私のほうに駆け寄り、肩を思い切りつかまれる。


「お前、明日それ着てくな!!!」


至極真剣な顔でそういって、なぜだかそっぽを向いてしまった。…けど、その一瞬でなんとなく、彼の考えていることがわかった気がした。


「…もしかして…心配?」
「…」
「だーい丈夫、浮気なんてしないよ」
「……しないしないっていう奴ほどするんだョ」
「それはあんただろ。 …一応恋人なんだから、信用しろよオイ」


すねた顔で振り返った銀時は、じゃーその服きたまま一回シようぜ、なんて言うから結局それかよと思いつつ右ストレートを食らわせた。…けど、どうせ銀時の思い通りになっちゃうんだよなぁ。


(友達の結婚披露パーティにピンクのドレスを選んだヒロインでした。)









2008.04.05 saturday From aki mikami.