「銀さん今日泊まりますからね。ちゃんと二人で帰るんですよー」
ニヤニヤといやらしーい笑いを浮かべた銀時に、入魂チョップを入れて黙らせた。何かもうバリバリ不審がってるけど、フォローのためと私の名誉回復のためにひとこと言っておく。
「大丈夫、外に寝かせるから」
「放置プレイアルか?」
「いや、プレイじゃなくて。指1本触れさせないから」
「大人のおもちゃアルか?」
「いや、さわらないと使えないでしょ。ってそーじゃなくって!」
「世の中にはワイヤレスと言うものもアル。 …あ、わかった!あれアルね、オ…
「えーかげんにせぇやボケェェェェェェ!!」
ドゴンッ
「…ごめんなさい」
「わかればいーのよ」
まったく。壁に穴があいちゃったじゃないの。まぁ数行後には元に戻るんだけどね(おっとこいつはシークレットでした)。
新八君と神楽ちゃんと定春は、二人(と一匹)で仲良くじゃれあいながら(ホントか?)家に帰っていった。その後姿を見送っていると、後ろから銀時に抱きしめられる。危うく落ちるところじゃないのよ!
「あっぶないなァもう!」
「るっせーなー。ガキどもの時間がやーっと終わったってのに」
「まだなべの片づけが残ってるでしょーが」
「んなもん後でいーんだよ」
ぎゅうぎゅうとしめつける。いや、痛いから。振りかえってにらみつけたら、気持ち悪く笑ってまた強く抱きついてくる。その力を無理やり振り切って見上げたら、待ってましたとばかりに額にキスを落とされた。
「…今日はやけに甘えん坊だね」
「銀さんはいつでもスイートよん」
「キモ」
「ひでーなぁ」
やわらかく顔を包まれる。見上げた瞳にはわずかに光が揺れていた。
「…死んだ魚」
「や、それ目の話でしょ。その言い方だとオレ自身が死んだ魚じゃね?」
「魚に謝れ」
「魚以下ッ!?オレ魚以下ですかァァ!?」
「うるさい」
「……なんかもうオレへの扱いひどいよな、さっきから」
しょんぼりとうなだれる銀時。そのしぐさに思わず笑みが漏れて少しにらまれたけど、ごめんごめんといったら口を尖らせながらごめんですむなら警察はいらないんだよ、だって。
「もう、何か謝る気なくなるんですけど」
「何でよ。銀さん傷ついたんですけどー」
「はいはい、ごめんなさいねー。ってか冗談よ冗談。 …私は死んだ魚も結構好きだよ?おいしいし」
「いや、それフォローじゃないからね」
「どうして、おいしいじゃない」
「いやだから、そういう問題じゃねーだろオィ」
お仕置きしてやるッ、そんなことをいいながら、私の髪の毛をわしゃわしゃかき回す銀時。それに抵抗しようとして手を伸ばしたら、どうしてか逆にその手をつかまれてしまって、はっと顔をあげたらそこには、私の好きな銀時の目がある。
いざとなったら輝くから。
前に銀時はそういっていたけれど、いざってときじゃゃなくても輝いてると思うんだ。そりゃあ情けなく鈍ってるときもあるんだけど。それでも、内に秘めている輝きってなかなか隠せるもんじゃない。
ね、銀時。
体が柔らかく包まれる。夜の風がふわりと流れ込んでくる。
全ての時が止まった瞬間に、私たちの唇が触れた。
2008.04.09 wednesday From aki mikami.