「いい曲ですね」
私専用の執務室にいきなり入ってきたLが、バウムクーヘンを頬張りながら言った。自分勝手な彼がいつ突入してきてもいいようにと常備してあるやつだ。
「うん、最近のお気に入りなの」
「は本当に歌が好きですね」
のそりと私の向いにやってきて、口いっぱいバウムクーヘンを詰め込んだ。私はそれを片目で捉えながら手元の書類をPCに打ち込んでいく。
最近のLの休憩は、私を冷やかすことらしい。画面を見ながらため息をついたりDelete keyを押したりすると、水を得た魚のごとく目を輝かせて突っ込んでくる。はじめはそれがいやでいやで仕方なかったけれど、人間というのは慣れる生き物である。細かいことで怒っていたらLの助手は務まらない。
私の目がICPOをとらえPまで打ち終えたとき、Lが手をぴたりと止めこちらを見たのが見えた。しかも小さく「あ」なんていうものだから、私も手を止めてLを見る。
「…何?」
と問いかけたのを無視して立ち上がったLは、いったい何を考えたのかいきなり隣に座ってきた。シングルで革張りのソファなのにだ。当然収まるはずはなく、彼の右足だけが私のお尻の横に置かれている。
「ちょ、ちょっと、何?」
「……love songです」
「は? …あぁ」
やっとLの言ったことがわかった。…わかったら笑いが止まらなくなって、Lに思い切りにらまれた。
「…笑いごとじゃないですよ」
「うん、そーだね。でも…っ、ははっ」
「だから、」
「大丈夫。 …ずっと一緒だよ」
端に詰めて座ると、そのスペースにLが収まった。きついけど、Lは満足そうに微笑んでいる。
これが最後のラブソングの始まりに なるよう祈るシングルのソファ 寄り添いながら今
共感してくれるLのそばに、ずっといたいと心から思った。
last love song : GARNET CROW
2008.03.03 monday From aki mikami.