冬になると夢を見る。
夢って言ったって楽しい夢じゃない。だからといって悪夢と呼べるほどいやな夢でもない。だけど私はその夢にうなされて、涙を流して目を覚ます。
真っ白い雪が降り積もる野原。その真ん中にぽつんと一人分の足跡が残っている。…人の姿はない。そんな夢だ。
そんな夢にうなされているとき、銀時はいつもやってくる。勝手にあがりこんできて、勝手に布団に入り込んでくる。そうすると、私は不思議と夢から覚める。
かちりと鍵のあく音が聞こえる。ドアが開く音と、間の抜けたバカの声が聞こえるのはほぼ同時で、柄にもなく安心なんてものを覚える。
「う~さみィ~~~!!」
「…また来やがったのかこの変態ヤロォ」
「あァ?まだ起きてやがったのかクソアマァ」
「そのクソアマの家に毎度上がり込んでんのはどこのどいつだよ」
「こっちの方がちけーんだからいーだろケチ」
そういいながら許可も取らずに布団に入り込んでくる。背中に触れる温かさがじんわりと体にしみこんで、涙が出そうになった。
「お、何だよおまえ、もしかして泣いてる?銀ちゃんが来てくれてうれちいでちゅか~?」
「うれしかねーよこのヘンタイ」
泣き顔なんて見られるのはまっぴらで、銀時に向き直って思い切りくっついた。そうしたら、ガキかおまえは、なんて言いながら背中に回る温かい腕。
ガキでも何でもいい。今はそばにいてほしい。声に出さずに口パクしたら、あんませめんなよオレはせめられるよりせめるほうが好きなの、なんて大真面目な声でいうもんだから、隙だらけの腹にこぶしをめり込んで黙らせた。
誰もいない、雪野原のはずなのに。
そこに立っているのが銀髪の男に見えるなんて、ホント私はどうかしてるんだ。
2008.04.05 saturday From aki mikami.