君だけ。あの時、何も言わずに抱き締めてくれた、君だけ。
僕が愛せる人。
雪が降るなんて、久々だ。だから窓でも開けようと思ったら、後ろからに止められた。
「風邪引くよ。…普通に見てよ」
「…うん」
手を引かれ、寝台に二人で座った。つないだ手が、温かい。
―――出会ってまだ、一年も経っていないのに。
玉鼎師匠が封神されて、――僕は泣いた。
寄生宝貝に体を犯されて、ボロボロになった。
王天君を倒して、…父が、死んで。
誰かに縋りつきたかった。抱きついて泣きたかった。
それでも、皆に弱いところは見せられない。
頼りない僕を、見せたくなかった。
「―――泣きたきゃ泣けば?」
突然。二人きりの空間で、そう言ってきたのがだった。
正直、ドキッとした。彼女はまるで僕の心を読んでいるかのように、色んな事をスパッと言い当てて、細い腕で、僕を抱き締めた。
とても、温かかった。
ずっとずっと求めていた、温かさ。
「なんか、眠くなって来ちゃった」
そう言って、僕により掛かる。
気づかれないように苦笑をもらして、彼女を引き寄せた。
その温かさは、僕の涙を、溶かしていく。
2006.02.19 sunday From mamoru mizuki.