「可愛い…!」
ニアが可愛い顔をして眠っていたから、つい出来心で、彼の頭に花の髪飾りをつけて見た。女の私よりも似合ってる気がする。くやしいなぁ、何て思っていたら、目を覚ましてしまって…事に気づいたニアは、とても不機嫌になってしまった。
「ちょっとニアー、機嫌直してよ」
「…」
「ニアー」
何度呼びかけても反応しないニアは、明らかに怒っている。…その目はかなり怖い。
「ごめんってば」
「―――」
「ニアー、大好きだからこっち向いて、機嫌直してよぉ」
「…」
黙々と、折り紙をするニア。一体いつの間に覚えてきたのかは知らないが、その器用な指先から、一般的な鶴や、風船、紙飛行機などなどが作られていく。けど、そのたびにニアはそれをつぶしてしまう。
「…あ、それ欲しかったのに」
「…」
「ニアの馬鹿…」
「…」
あぁ、だんだん腹が立ってきた。いや、逆ギレなんだけど、でももう何言われたって知らない。
「ニア可愛い~」
完全にイヤミ。ニアが"可愛い"って言われること嫌いなの、知ってるし。
案の定、私の言葉にニアはじろっと視線を向けた。
「それつけても可愛いけどー、普通にしてても可愛いんだよねぇ~」
禁句だってわかっていて連発する。私だって怒ってるから。
私はずっと、ニアの可愛さについて語る。冷たい視線なんて、知ったこっちゃない。
「―――」
突然、不機嫌極まりない声が私を呼ぶ。同時に強く方を押され、床に押し倒された。そして頭を両手で抑えこまれる。髪の毛をぐっとつかまれ、やっと離れたと思ったら。私の頭にはさっきまでニアがつけてた髪飾り。
「―――の方が、可愛い」
「っ」
嘘だ。絶対嘘だ。怒った顔で言われたって、信用できるか。そう思ってるのに。
「可愛いです」
体が、火照る。絶対私の事からかってるはずなのに。
やがてニアは、くすっと笑った。その時の顔と言ったら本当に意地悪って言ったらないけれど、そんな彼にもときめいてしまう自分がいた。
2006.02.24 friday From mamoru mizuki.