私。
あなたを見ていると、自分って何なんだろうと思う瞬間がある。…あなたが存在感に溢れているから。
私はずっと目立たない子供だったし、竜崎のように推理力もない。だから…
自分には何も出来ない。それがコンプレックスになっている。この捜査本部にいてもそうだ。
だけど昨日、突然松田さんに言われたので、すごく驚いてしまった。
『さんと竜崎って、似てますよね』
…わけがわからなかった。どこをどうしたら私と竜崎が似るのだろうか。そう竜崎に言ったら、あの人はよく分かりませんから、と言った。
「竜崎…それ失礼よ?」
「本当のことです。…それよりあなたは、自分に取り柄がないとか個性がないとか思っているんですか」
隈の深く刻まれた黒い目が
私を見据えた。…吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「だってそうじゃない?」
「そうじゃないです。あなたは…いえ、この世に生きている人間はみな何かしらの 個性を持っています」
「…一番強烈な個性をもったあなたに言われると否定したくなるわ」
「…」
ぎろ、と黒目が動いた。なんだかにらまれているようだ…
「わたしにしてみればあなたほど個性に溢れた人もいないと思います」
「それはそれで失礼…」
「個性的なのはいやですか」
「そう言うわけじゃないけど…」
だって自分が個性的なんて少しも考えなかったから。
「…」
竜崎がいつのまにか立ち上がって、私の目の前にいた。…相変わらず目は私を一直線に見つめている。
いきなり。
竜崎は、私を抱き締めた。驚いてしまった私は、彼をつき飛ばしてしまう。
「っ…なっ、何するのよいきなりっ…!」
「…仮にも恋人である人間に向けてこんなことするのは、あなただけだと思いますよ」
にやり、と口角をあげて笑う。瞬間やられた、と、敗北感が頭を過ぎった。
なんだか納得いかない。けど、どうやら私は自分で思っているほど普通じゃないらしい。まぁ竜崎の恋人になれるんだから当たり前と言えば当たり前だ。
…自分のことは、自分が一番よくわからないものなんだね。
2006.11.13 monday From mamoru mizuki.