久々に彼の部屋に入れてもらったと思ったら…彼は服を着たまま、冷たいシャワーの下でボーっと突っ立っていた。
「…変」
「それ、酷いです。撤回してください」
「はいはい。っていうか、何してんの?」
私の問いかけに、Lはぱかっと口を開けたかと思うと、右手親指をくわえて少し考える動作をした。
「―――さぁ?」
「あぁ、自分でもわかんないってね。 本当にあんたのやる事は…」
思わずため息が出てくる。天才の考える事はいつもいつもわけがわからない。
私は脱衣所に置いてあったタオルで、Lの頭をふいた。
「…すみません」
「っていうならこんなことしないの。…まったくもう」
自分で言っていて母親みたいだとわかっていながら、ついついやってしまう。…彼の行動には、時々心底呆れる。確かにこの人は頭はいいけど、やる事は限りなく馬鹿に近い。
…まぁそんな彼を好きになったんだけど。
「…、ちょっと良いですか?」
改まって、Lが言った。彼の真剣な表情なんてもう随分見てなかったけど、やっぱりしゃんとすれば格好良い、何て考えてみたり。
「…何?」
「…実は、」
…いつも言いたい事を(以外と)ズバッというLが、言葉に迷っている。私が何かおかしいなと思った瞬間、Lはやっぱり良いです、何て曖昧な事を言った。
「―――何それ」
「…いや、そのですね」
「……ハッキリしてないLって、なんか変」
「酷い、」
口を尖らせたLが、私の首に両手をまわして、すがりついてくる。私はそんなLをずるずる引きずりながら、Lの髪からの水滴で濡れた床をふいた。
「…ー…」
心なしか、Lの声が情けない。
「―――目、つぶってください」
突然そう言われて、驚いた。ついさっきまでと違って、…事件に立ち向かうときのような…Lだったから。
「…」
私は言われた通りに、目をつぶった。すると、手をとられ、その上に何かが置かれる。
「もう良いですよ」
目を開ければ、そこにはシルバーの、可愛いリング。
「…これ」
「…さしあげます。…誕生日、ということで」
…あぁ、そうだ。もうすぐで私の誕生日だったんだ。忙しくてすっかり忘れてたけど。そしてさっきのLの反応は、…照れてたのか、何だ、びっくりした。
「ありがとう。…でも、L?」
「はい」
「―――はめてよ」
言って右手を差し出せば、Lは驚いた顔を見せる。―――赤くなる事はないけれど、やっぱり照れているらしい。
Lの細い指で、リングがはめられる。花嫁になった見たいだなんて思いながら笑ったら、Lも滅多に見せない満面の笑みで笑った。
2006.02.21 tuesday From mamoru mizuki.