「いーしてください、いー」
「『いー』?」
い、と口を横に開いて見せると、Lはじろじろと眺め出す。やだなに、歯並びの確認?それとも歯医者さんごっこでもしたいわけ?かなりやばい遊びだと思うんだけど。
「……やっぱり…」
「はぁ…何が……?」
「八重歯」
こつん、とLの爪が当たった。わ、なんか気持ち悪い感触。
「人より尖ってませんか?」
「………そう?」
「そうですよ。それに、他の歯も細くて長い」
「そんなことないと思うんだけど……」
「そんなことあります。見てみてください」
そう言ってLは私のポシェットに入っていた手鏡を勝手に取り出した。……まぁ別にいいんだけど。
言われた通りに見てみる。けれど私にとってはこれが普通だ。
「……別に」
「じゃあ比べてみてください」
そう言って、Lもい、と口を引っ張る。……比べてみると確かに、尖っているような……。
「ね、尖ってるでしょ」
「うん…まぁ。でも、だから何………?」
「いや…キスをすると当たって痛い時かあるので気になって…」
「そ、そうなの…?」
「そりゃあもう。血が出る時までありますよ」
「……………ほぉ~?ならば私は指図めヴァンパイアか?」
「ヴァ…ヴァンパイア…!がそんな恐ろしい生物だったなんて………!」
「うらぁー!血ぃ吸うたろかぁー!………って何やらせんのよっ…!」
バシ、と勢いよくLの頭をたたいてやった。
「が勝手にやったんじゃないですか……」
「うっさい!大体真顔で笑えない冗談いうなっ!」
「ヴァンパイアって言ったのも守ですよ…」
「否定しろや否定っ!」
「怖……」
「あ?なんか言ったかコラっ」
「なんでもないですごめんなさい」
び、と表情を固めたLが、一歩ずつ私から離れていく。……いや、そこまで怒ってないんだけど……でも、面白いからもう少し。
「…もう二度とキスしないから」
「っ!!?そんなっ…!」
そんなに必死になるのかってくらい必死に駆け寄ってすがりつく。やば…私別にS趣味じゃないんだけどなぁ。
…あーもぅ。
「だって血でるんでしょ」
「嘘です」
「尖ってるの嫌なんじゃないの?」
「嫌じゃないですっ」
「……じゃあ…文句言うな」
「…すみません」
「謝るくらいなら………キス、して?」
Lに愛されてる印。広がる甘い感情を、感じさせて。
「……いいんですか」
「いやならいいのよ?」
「っ……!」
そっぽを向こうとした私に、Lは突然貪るようなキスをした。…脳を直接刺激するような、甘い痺れ。意外と大きくて逞しい手は私の頭をすっぽりと覆っている。
…まるで肺がなくなったかのように、息が出来ない。あ、やだ、頭真っ白………
ようやく唇が離れた時、彼は私を思い切り、力の限りに抱き締めた。一瞬骨が軋んだ気がするんだけど、大丈夫かな。そんな私の心配なんてお構いなしなLは、また少し力を込めて来る。…苦しい、と言う余裕すら与えない、激しい愛情。
「………愛してる、」
こういう時だけ敬語じゃないのって、すごく卑怯だと思うのは私だけかな。……だって、思い知らされる。私は彼を好きで、どうしても彼には勝てないんだって。
「……わかったから」
「分かってない」
「分かってる…。…知ってるから」
「わかってないからああいうことをいうんだ。……私は、が好きだ」
いいながら、何度も口付けてくる。恥ずかしいっての、わかんないかね。…まったくもう。
「……私も、すきだよ……L」
結局これをいわせたかったんでしょ。私が弱いのを知ってて攻めるんだから。
…言わなくても分かってるくせにね。
(相思相愛で、以心伝心なんだから)
2006.10.14 saturday From mamoru mizuki.