25. 狼



部屋に入るなり一番にLに抱きつかれた。またですかぃダンナ、と半ば冗談めかして言うと、Lはまたですよ、と悪びれた様子もなく言う。


うん、私を休ませてくれる気はないわけね?別にいいんだけどさ。いつものこといつものこと。だけどね、L?


「ど・お・し・て!どーして手がボタンを外しているのかなぁ~?」
「いたっ、いたたたっ、、痛いですよ!」
「あんた!昼間っから何考えてるの!仕事しなさい仕事!あんたの頭脳を世界中が待ってるんでしょう!」
「世界なんて知りません。自分の欲望を満たさないと仕事なんて手につきません」
「こんにゃろ…!」
「あいたっ、だから痛いですって、っ」


思いっきりLの頬っぺたをつねってやった。帰ってきてそうそう襲われるなんて、たまったもんじゃないもんね。…まぁもう少し経ったら考えてやらなくもないけど。


「とにかく仕事だけ終らせなさいよ。夜になったら相手して上げるから」
「なんか水商売のお姉さんみたいですね」
「…水商売のお姉さんはあんたなんかに構ってくれないわよっ!」


Lの頭を三回叩いてひっぱがし、脱がされかけた服を調えた。泣く泣く仕事にとりかかったLの後ろ姿に、思わず息が漏れる。


なんだかんだいって、Lもお年頃なんだから。わかってるんだけど乙女として簡単に行為を許すわけにいかんのですよ。でもきっとさ、探偵ってストレス溜まるんだよね。外に出ることも滅多にないしさ。…そう考えたら、ついつい甘くなってしまうんだよね。


「きびきび頑張るっ!」
「……はい」


むす、と答えたLの背中に抱きついて、頭を軽くなでてやった。モニターに向かうその横顔を見つめて、頬に口付ける。


「頑張って、L」


出来るだけ、優しく言う。するとLはさっきより幾分か気合いの入った声で、はい、と答えた。


男は狼だなんていうけれど、私にとっては操作しやすい可愛い子なんだよなぁ。だからこそ時々見せる男の顔にときめいちゃうんだけど。


(つまりはただののろけ話)









2006.10.12 thursday From mamoru mizuki.