Lと出会って数年が経過した。父親には怪しげな仕事に関わっているのではないかと心配されているが、Lのことは詳しく話せない。…それは私とワタリ以外の誰であっても、例外ではないはずなのに…突然、Lは日本の捜査本部と会う、と言った。
「…どうして」
「キラなら、必ず私を殺すために私に近付こうとするでしょう」
「…自らキラをつかまえようってこと…?」
「はい」
「そんな囮捜査みたいなこと…賛成出来ないわ」
「賛成出来なくてもします。…わかってください」
椅子の上でぎゅっと膝を握り締め、黒い瞳を向ける。…嫌とは言わせない。そう暗に言っている。
「…どうせ、反対してもするんでしょ」
「はい。でも、心配しないでください。私はL以上の本名を明かす気はありませんし、あなたにも必ず偽名を使ってもらいます」
「…最初からそのつもりだったんでしょ」
「はい。だからも私のことは竜崎と読んでください。あなたのこともアキと呼びます」
その名前は以前潜入捜査で使った偽名だった。…まるで知らない人のようで、聞き苦しい。
「…竜崎、じゃあワイミーはワタリでいいのね?」
「はい。…わかって、ください」
言葉と同時にLは立ち上がると、驚くほどきつく…私を抱き締めた。私の肩に頭をもたれ、小さく呟く。…ごめんなさい。
「…許してあげない…なんて、言えるわけないでしょ」
「…っ」
「私はいつでもあなたと一緒に生きてきたんだから。…これからも、あなたの決めた道を進んで行くだけ。それでどうなったって、私は文句なんて言わないから」
黒いぼさぼさの髪を軽く梳いてやると、Lはわずかに顔をあげる。…黒い瞳が、私を捕らえている。頼りなく揺れているのがわかる。
…Lも、不安なんだね。
「ばか。…シャキッとしてよ?」
「…はい」
「せっかくキラに勝てそうなんだから」
「……」
「何…?」
「…あなたとワタリを危険に晒すこと…それだけが悔しいです」
腰に回った腕にぐっと力が籠った。
「…あなたを守って死ねるなら、それも本望よ」
「…私はいやです」
「我が儘」
「はい。…でも悪い我が儘じゃないでしょう?」
「…そうね」
答えたら、唇が降ってきた。…なんだか切ないキス。
すべてはLの狙い通りでも、Lは不安なんだ。それは私も同じだけれど。
きっと、このまま行くところまで進んでいく。…この道が、ハッピーエンドに続く道であることを、祈らずにいられなかった。
2006.11.14 tuesday From mamoru mizuki.