34. 来



生まれ変わり。


仙人は死ぬことがないんだから、そんな言葉は不要。それは、死を恐れた人間が使う、愚かな言葉。

だから

それを信じてみたいと思う私も、きっと愚かだ。


なんてことを老子に言ったら、あなたは少し笑った。


「…いいんじゃない?」


普段表情を変えない老子が、くす、と笑う。明日は雨かなと勝手に立てた予想に、それもいいかもね、と老子は返した。


仙人になった時から考えていた。私はきっと、早く死ぬだろうと。一種の予感だ。……仙人が死ぬなんておかしな話なのかもしれないけど、仙人だって完全な不死じゃない。


「…
「はい?」
「…死が怖いと思うのは、いいことだよ」
「え…?」
「死があるからこそ、生は活を得る。生があるからこそ、死は意を得る。どちらかがかけてしまうことはない。…死を忘れることは、生を忘れることだよ」
「難しくてわかんない」
「今はね。でもいつか、わかるよ」


老子は、意味深な笑みを浮かべた。そしてまた怠惰スーツに身を沈める。…次にちゃんと起きるのは4年後あたりかな。それとももっと先?…そのとき、私はちゃんと老子の隣りにいるだろうか。


(ずっとずっと、来世でも、老子の隣りにいたいです)








2006.11.02 thursday From mamoru mizuki.