黒い黒い塊が、落ちて来た。
なにかと思って見てみれば、それは…
「黒曜石…?」
こんな物がどうしてここにあるのか。一体どこから持ってきたのか。…見当もつかないが、しかし前にこの部屋にいた客だとして、こんなものをなぜ?
大体なぜ上から…?
一番思い出すべき事態に気付いて上を見上げる。
しかしそこには灯らない室内灯があるのみ。
「…なんだ?」
どうしたものか。思い悩んでいると、不意に背後に気配を感じた。…そうだ、ワタリに相談しよう。振り返った私の目に飛び込んだのは、…見知らぬ女性だった。黒いワンピースがふわりと揺れる。
『…L…さん?』
「っ…!!」
『どうしてそんなに驚くの?』
「…いつから、そこにいた…!」
『ずっとよ?…あなたがわたしに触れたから、見えるようになっただけよ』
くす、と鈴がなるような声で笑うと、一歩こちらに踏み出して来る。…なぜか、それを拒否出来なかった。
「…一体…どういうことだ」
『……忘れてていいの。私はただ、あなたに会いに来たかっただけだから』
…そう言って彼女が見せた笑顔はなぜか儚く、美しかった。…私は、どこかで彼女に会ったことがあるのだろうか。
覚えがない。
「…わけがわからないことをいうな…私はお前に会ったことなど…」
『本当に?』
「っ…」
唇が触れそうなほど、顔が近付く。…自分が間違っていると思わされる。
「…どうしてそんなことをいう…?」
『どうしてって?もちろん…約束を果たしにきたからよ…?』
「約束…?」
『そう…10年前の、約束』
瞬間、彼女は私に口付けた。…視界が真っ暗になって、まるで目をつむっているようだ。黒く溶け込む彼女は、今にも消えてしまいそうに見える。
『…さようなら、きっと―――』
「…?」
『きっとあなたの愛を、感じた』
「私の…愛?」
『私はもう消えるけれど、今日のことを覚えていて』
「…消えるって…」
突然闇が晴れた。もとの部屋の真ん中で、彼女の姿だけが見えない。
『…さようなら、L』
ざらっ
手の中の石が…黒曜石が、音も立てずに崩れた。
最後に声が、聞こえた。
『ありがとう』
その感謝の言葉の意味が、わからなかった。だがただひとつ、
―――黒い黒い塊が、脳の奥を揺らした。
追記
この話はもともと封神演義連載用に考えました。でもちょっと無理があってボツになりました。
今回このネタをLで使ったのはただ単にファンタジーなデスノを書きたかったからです(笑)
約束の内容などはご想像におまかせします。
2006.11.14 tuesday From mamoru mizuki.