40. 血



「Lー、爪切りしらない?」
「爪切りですか?それならそっちのデスクの上に多分乗っかってますよ」


パソコンから目は離さないで言うL。いや、自分で使ったんだから自分で探せよ。なんて文句を言っている場合ではない。今すぐ使いたい。痛くて仕方ないのだ。Lに探させるより自分で探すほうが数倍早い。


書類やら文房具やらの山を漁っていると、ようやくお目見えした爪切り。私は出血している左手の中指先を自分に向けて、じ、と傷をみた。


さっき包丁でやってしまった。結構深くいったらしく、皮がびらびらしていてとても気になるので爪切りで切り落としてから絆創膏を貼ろうと思ったんだけど……


痛い!見ているだけでも痛さ倍増だ。そこに爪切りをいれろと……?


「…無理」
「何がです?」


私の後ろから人差し指をくわえつつのぞき込んで来るL。


「…また派手にやりましたね」
「めちゃくちゃ痛いんだからね」
「わかっていますよ。…それにしても、現場写真以外の血なんて久々に見ました」


そう言ってLは私の指を取り上げた。…掴まれると痛いんだけど。


「…そんな物珍しげにみないでくれる?」
「どうして。嫌なんですか?」
「嫌じゃないけど、いい気分はしないかな」
「……あの」


数秒間を開けて、Lが小さく言った。…なんだか嫌な予感がするんだけど。


「…舐めてもいいですか?」


ほぅらきた。


「聞くなっ!」
「だって聞かないと怒るじゃないですか」
「聞かれても困るんだって!」
「…我が儘」
「ぶん殴る?」
「遠慮します」


そう言って、結局は私の指を口に含んでいる。…だから最初からそうすればよかったのに。


「…は何型でしたっけ?」
「なんでそんなこと聞くの」
「血が甘い気がするんです。ほら、たしかO型はカレー味とか言うじゃないですか」
「なんだそれ…」
「あれ、知らないんですか?」
「知らないわよ」


カレー味だって。そんな馬鹿な話あって堪るもんか。大体カレー味の血だったとして、気持ち悪いことこの上ない。


「まぁ、の血は何型でも甘いでしょうけどね」
「…あんたドラキュラかって」
「それでもいいですよ?が私のものになるならね」
「っ……ばかっ」


Lの細い指が、絆創膏を巻いてくれた。…別にドラキュラ何かにならなくても、私はあんたのものだっての。


(悔しいから絶対言わないけど)









2006.11.05 sunday From mamoru mizuki.