50. 交



カーテンを開けたら、思わず手が止まってしまった。


ひらひらと舞い落ちる真っ白な雪。ゆらゆら揺れながら落ちてきて、消えた。


携帯を開いた。かけるのは、L直通の電話。…きっとモニターばかりで外なんて見ちゃいないだろうから。


数回のコール音。途切れたら、はい、と聞こえて来る低い声。


「Lおはよ」
…おはようございます』
「外みた?見てないなら見た方がいいわよ。Open the curtain.」
「…OK」


だるそうな声が返ってきた。まるでそんなことはどうでもいいと言う風に。でもそれもいつものことだから文句を言ったりはしないんだけど。


『……雪』


電話の向こうから聞こえる、感嘆の声。なんとなく勝った気分になって、私は少し笑った。


「…驚いた?」
『はい…ここにいると季節感がないので』
「ならよかった。少しは息抜きも必要よ?」
『…ありがとうございます』「どういたしまして」


私が笑っていると、どうやらLは気分を害したらしい。笑わないでください、と言われた。


「別におかしくて笑ってるんじゃないわよ」
『じゃあなんで笑ってるんですか』
「んー? 嬉しいから」
『嬉しい?』
「そう、嬉しいの」


Lと電話で話せること、今日雪が降ったこと、今同じものを見てること。


『…私は嬉しくないです』
「あらそう?」
『はいだから…早く来てください』


拗ねたみたいな言い方だ。なんだかくすぐったくて、また笑いが零れて来る。


「…はいはい、今から出るから」
『あと1時間以内で来てください』
「げっ…お風呂入る時間ないじゃない」
『こちらで入ればいいでしょう。…とにかく早く会いたいです』
「…わかったよ」


私の答えを聞いてLが微かに笑ったのが聞こえる。…なんで今のタイミングで笑うのか、それはきっと、私と同じ理由なのだろう。


(きっと心が交信しているんだ)









2006.11.12 sunday From mamoru mizuki.


(私の住む札幌では今日雪が降ったので、初雪記念)