09.マラソン



「全員30位以内に入らないと…!」


ケツバットだな。モモカンの言葉に、全員が心の中で付け足して、そして青ざめた。つーか50以内ならともかく、30以内って結構きつくないか?他の運動部も似たようなこと言われてんだろ、多分。


「あれ、隆也弱気?」


に話したらそう言われた。いや、べつに弱気とかじゃねーけど。


「三橋とか西広とか、入れるかと思って」
「へぇ、人の心配する余裕があるわけね」
「ま、伊達に中学からシニアやってねーってこった」
「でもなぁ~。隆也って走るの苦手そうだよね」
「……なんでそう思うんだよ」


オレが怒ったのがわかったのか、はくす、と笑った。あー、その笑顔がまたムカツク。


「笑うなよ。っつか、ガキ扱いすんな」
「だーって、隆也負けず嫌いなんだもーん」
「それとガキ扱いは関係ねーだろ?」
「あるある、大いにある!ってか、やっぱ隆也って子供だよ。…いい意味でね」
「ガキにいい意味も悪い意味もねーだろ!クソッ」
「ほらまたムキになっちゃって」


ひらひらとオレの前で手を振って、楽しそうに笑う。やめろよ、と睨んでも、にはサッパリ効果がない。


「…ね、隆也」
「なんだよ」
「マラソンで10番以内に入ったらさ、ガキ扱い、やめてあげる」
「………本当か?」
「うん!」


返事は軽いが、その顔には不敵な笑みを浮かべている。オレが10以内に入れるわけないって、バカにしている笑みだ。


「…よし、見てろよ。ぜってー10位以内にはいってやっから」


そしてもうガキ扱い出来ねーようにしてやる。って言ったら、はいはい、なんて答えやがって。チクショー、見てろよ!


そしてマラソン大会当日。


6番の旗を持ってかえってきたオレに、とモモカンがあのときと同じ不敵な笑みを浮かべたとき、やっぱ自分はガキだと気付かされてしまった(くっそー!)。









2007.07.02 monday From aki mikami.