「おっ」
校舎から聞こえてくるサックスの音。最近は音色でだってわかるようになってきた。大会が近いから、9時近くまで残って練習するらしい。
「おい榛名、何ボーっとしてんの!」
「うっせー!オレァ今イソガシーんだョ」
「うそつけ!さんのサックスに聞きほれてるだけだろ!」
「なっ…うっせーんだよ!」
休憩中、音楽室からいつも聞こえるのサックス。聞きほれるほど好きな曲じゃねーけど、アイツが他のヤツラよりうまいってことはわかった。何せソロをまかされるくらいだ。
「榛名って、けっこーさんにベタボレだよなー」
「ち、ちっげーよ!」
「ちがくないよ。もーラブラブすぎて腹立つくらい」
「ラブラブとかゆーな、キモチワリィ!」
「そーゆうことばっかいってると、さんにキラワレ… あ」
「あ?」
急に曲が変わった。しかも窓開けて吹いてんのか、やけに音がでかい。
「この曲って、榛名が好きなやつじゃない?」
「…」
「吹いてんの、さん…だよね?」
「…」
「なぁ榛名」
「ウルセェな!だまって聞ーてろ!」
そういえば前に、別の曲を練習していると聞いた。自分が編曲したんだって、自慢げに話してたな。
…あァ、なんだよくそ!うれしーじゃねーか!
そう思った瞬間、秋丸がバカップルだなー、と言ったので、振り返ってつかみかかってやった。
2007.12.28 friday From aki mikami.