18.卒業式



(三橋→2年、ヒロイン→3年)


3月1日。今日私は3年間の高校生活を終えた。…高校の卒業式っていうのはあっけなくて、クラス全員名前を呼ばれて、代表が証書をもらって、送辞と答辞があって、その他偉い人のお話があって終わる。中学のときは歌とか歌ってもっと感動的だった気がするけど、今回は少しもなくことがなかった。


友達とお別れを済ませてグラウンドへ向かう。今日も部活で忙しい三橋くんに会いに行くためだけど、なんだか顔をあわせづらくて階段の途中で足を止めた。


こんなとき、同い年じゃないのはつらい。


私が年下なら、思い切り三橋くんに甘えられるのかもしれない。けどあいにく私は年上で、三橋くんと離れるのがつらいって、そんなことはっきりいえる立場じゃない。だけどこれからここで、部活をがんばる三橋くんを見られなくなるのかと思うと、寂しくて仕方ない。


…こんなことでなきそう、なんて。


「……ちゃん?」
「!」


反射的に振り返った先には、心配そうにこちらを伺う三橋君がいた。溢れかけていた涙を無理やり押し込んで、無理やり笑って向き直る。


「三橋くん、式終わったよ!」
「あ、うん…」


そう答えた三橋くんはどこか元気がない気がした。いつも部活のときは楽しそうな顔してるのに。どうしたの?と聞いたら、ふるふると首を振った。


「オレ、は、なんでもない!それより…ちゃんが…」
「え?」
ちゃん…なきそうな顔、してる」
「っ、」


まさか言い当てられるなんて。突然のことで頭が混乱している私に三橋くんはそっと近づいてきて、こつん、とおでこがぶつかった。目の前で、きれいな顔が悲しげに目を伏せている。


「…オレ、 はやく、追いつくから」
「三橋くん…」
「もう寂しいおもい、させないように!」


大きな目が開かれて、私を射抜く。その瞳にうつる自分の顔が歪んでいるのがわかる。視界がぼんやりした靄に包まれて、体は三橋くんの腕に包まれて、気がついたときには声を出してないていた。


私の大好きな三橋くんは、いつの間にか立派な男の子になっていて、それがとてもうれしいけど、離れていってしまうようで怖くなった。だから私は力いっぱい、三橋くんにしがみついて泣いた。









2008.03.05 wednesday From aki mikami.