他のクラスが硫黄を使った実験をしたせいで、この階全体に嫌な臭いがたちこめている。いわゆる"卵の腐った匂い"って奴だ。昔っからこういうのには弱くて、窓際の席を借りて窓あけて、そこで突っ伏していた。
オレのクラスもやったけど、あんときは相当キツかった。
そーいや、あんときからと話すようになったんだよな。窓の外をずっと見ていたら、ふっと思い出した。なんかって、青空、って感じするんだよな。特別元気いいってわけでもねーのにさ。
「…の」
「……んー……」
「あの!」
「……あァ?」
考えごとしてんのに。ちょっとイラついて振り返ると、そこには今まさに考えていたが立っていた。
「っ、わっ……!」
「高瀬くん…あの、お弁当…とりたいんだけど…」
「えっ…ここ、の席?」
「うん。…かなりずらされてるけど…」
「あぁ…さっきHRだったもんな」
オレ、気付かずにの席座ってたんだな。…ただそれだけなのに…なんだよ。すげー緊張してる。バカかオレ!
「ごめ、今よけ…
「いいよ、座ってて。…臭い、きついんでしょ?」
「え? …あ、あぁ…」
オレのこと気遣ってくれんだな。やべぇ、なんかグッと来るゾ…?いい奴なのは知ってたけど…でも、そーじゃなくて!
「……あの」
「え?」
「だ…大丈夫?」
「え、お、 …おう」
「水とか飲んだら少しスッキリするかもよ?」
「あぁ、サンキュー」
「「……」」
変に沈黙になっちまった。これ以上気まずくなる前に、なんか話題! っつったって、なんかあるかよ?さっき、なんか言ってたっけ? えっと…
「あ」
「え…どしたの、高瀬くん」
「……弁当」
「え?」
「弁当…食うの?」
「うん…食べるよ」
「ならさ…オレと、一緒に食わねぇ?…外で」
「え…」
うわっ!何言ってんだオレ!何が一緒にだよ!、すげぇ困ってんじゃん!てか、こんなこと言うつもりじゃ…
「―――…いいよ」
「だよな!わりぃ… ……へ?」
「…いい、よ…」
恥ずかしそうに笑う。
ヤバイ、かわいーよ、その顔!このままじゃ、オレ…
――― 好き、に…
「なら行くぞ!」
だめだめ!今は夏大に集中集中!余計なことは頭から振り払おう!
オレは自分の弁当をつかむと、振り返らずに廊下を歩いた。
後ろに、の気配を感じながら。
2007.08.15 wednesday From aki mikami.