29.ALTとお喋り



とオレは、小さい頃からずっと一緒だ。幼稚園も、小学校も、当然中学も一緒だ。だから、オレはに一番近いと思ってるし、たぶんも同じように思っているだろう。…けど。


廊下の向こう側に、の姿が見えた。離しているのはALTのジムだ。女子にかなり人気がある、さわやか系なやつだ。


はずっと英会話を習っていて、ひと通り英語を話せる。だから、ジムとも仲がいい。


ああ言うのを見てると、オレの知らないがいるって、思い知らされる。だって、オレには二人が何しゃべってるかなんて、すこしもわかんねぇんだ。が誰かとしゃべるのがいやだなんて、そんなこと思ってない。の全てを独占したいとも思ってない…はず、なのに。


なんだよオレ、矛盾してんじゃん。


最近、のことを考えてるとイラついてくる。のことが嫌いってわけ
じゃねぇけど、嫌いみたいに思えてくる。…それでもあいつは、こーくん、こーくん、ってオレによってきてくれるんだろうけど。


「あ、こーくん!」


俺に気付いたが振り向いて、大きく手を振った。ジムに軽くバイバイして、こっちにかけてくる。


「よっ。教室移動中?」
「の帰り。つーかその呼び方やめろっつの」
「なんでー?ずっと呼んでるんだからいーじゃない!」
「だから、ずっとやめろって言ってるだろ!」
「いーじゃんケチ!」
「ケチじゃねーよ!」


教科書で軽く頭を叩いてやると、仕返し、とか言いながら背中を叩かれた。こんなやり取りも、もう何回しただろうか。


バカみてーにはしゃいで、笑って、元気で…子供みてーな性格。それがオレの見てきただ。ずっとずっと、オレと一緒にいただ。オレは、あんな、知らない。


あんな"大人な"は―――


「…こーくん?」
「っ」
「どしたの?」
「…なんでもね」


今は、考えんのやめよう。こんな苛々してて、まともに考えられるわけねーんだ。今のオレに大切なのは野球。一にも二にも、三四も五も全部野球だ。のことなんて、八か九くらいでいいんだ(メシが六七で勉強が十位)。


むくれるの顔をみながら、オレは苦笑いするしかなかった。









2007.08.15 wednesday From aki mikami.