40.校内公認の



一年の間って、みんな知り合ったばかりだからまだ恋愛には発展しにくい。だから周りにはカップルが少なくて、私たちみたいな中学からの付き合いがすごく目立って見える。


だからだと思う、別の階に行っても「田島君の彼女」って言われるのは。


田島が知られているのはわかる。新設の部なんて珍しいし、あの桐青高校に勝ってから、野球部はずいぶん有名になったから。けど、これまで地味に、平凡に生きてきた私が、みんなに知られているのはおかしい。絶対!


今日なんて、歩いている間に3回は「田島君と付き合ってるんでしょ?」って呼び止められた。しかも、3人とも結構怖いセンパイで、もし何かされたらどうやって逃げようかと、本気で考えたくらいだ。


とぼとぼと学校への道を歩く。こうやって考えると、田島って結構もてるのかも知れない。確かに中学のときも女子と仲良かったけど、みんな遠慮してくれてただけで実は好きだったのかな。考えていると、なんだか鬱になってくる。


学校についてすぐ、校門に立っている女子の集団に気がついた。こっちを見ている気がする。私はできるだけそちらを見ないようにして、前を通り過ぎようとした…けど。


「ねぇアンタ」


アンタって…。思いながら立ち止まった。ああ、今日はよくこれにあうな。


「なんでしょうか」
「アンタさ、田島君と付き合ってるわけ?」
「はぁ、まあ」
ーーーーーーーーーー!!!!」


この声は…。 反射的に振り返ると、グラウンドの方から朝練を終えた田島が走ってきているのが見えた。


「愛してるゾーーーーーーーーーー!!!」


そう叫びながら両手を広げる。あまりにも勢いがいいもんで、ついよけてしまうと、向こうの木にドスン、とぶつかってとまった。


…わかった。悪いのは周りのカップルが少ないことじゃない。"コイツ"だ。


コイツがいろんなところで叫ぶからだ。


センパイがたは、あきらめてくれたのかいつの間にかいなくなっていた。




私はほかの野球部が見守る中、復活した田島に右ストレートを食らわせた。









2008.01.06 sunday From aki mikami.