42.校則違反な奴



今日は日曜日だってのに、珍しく練習が早く終わった。何でも今年の高体連、サッカーはうちの学校でやるんだとか。午後からは他校が来て先生方もみんな借り出されるから、全員さっさと帰れってことらしい。そのおかげで、オレはとまったりした休日を過ごしていた。


オレの部屋のベッドで二人でぼんやり座る。こういうシチュエーションだと、やっぱり色々…と思ったりしなくもないが、それよりオレはこうやってただ二人でいるほうが幸せだと思う。その方がも嬉しそうだし、何よりの話をゆっくり聞いてやれる。普段あんまりかまってやれない分、こういうときにはちゃんとの言うことを聞いてやりたいと思う。


オレはの後ろに回って、ひざの間に入れながらゆっくりと抱きしめた。こうされるのが一番好きだとこの間教えてくれた。


「じゅ、準太くん…」
「ん、なに」
「……なんでもない」


たぶん恥ずかしいんだろうな、と思っても、当然離さない。も嫌がるわけじゃないし、むしろオレの腕をつかんでくる。オレはその手をとって、左手の薬指に光る指輪をゆっくりと親指で撫ぜた。誕生日に、オレがプレゼントした指輪だ。


「あ、そういえばね、準太くん」
「なに?」
「この間ね、はじめて服装検査に引っかかったんだよ」
「…は?」


あまりに突拍子もない話題に、オレは思わずをのぞき見た。でも、は検査に引っかかったっていうのに、落ち込むどころか少し嬉しそうな顔をしている。


「あのね、準太くんにもらった指輪、はずすの忘れちゃって。没収されそうになったけど、何とか大丈夫だったんだ」


みんながかばってくれてね、と説明するの言葉を聴かずに、オレは強くを抱きしめた。


「…指輪なんかつけてたら、違反になんのあたりまえだろ」
「だって…はずすのやだったんだもん」
「そーかよ。…ったく…ホンット、って…」


かわいいやつ。つぶやくと、真っ赤になってうつむいた。かわいくないもん、とかいってるけど、その言い方がまたかわいいって。


「明日からはさ、首にかけてりゃいーんじゃねーの?」
「あ、なるほど!あったまいー!」
「誰でも思いつくだろ、普通」
「え、そっかなぁ…」
「そうだよ」


ぽんぽん、と頭をなでてやると、じゃー帰りにチェーン買わないと、といったので、オレはを立たせて手をつないだ。今からいきゃいーじゃん、というと、うん、と頷いて微笑んだ。









2008.01.06 sunday From aki mikami.