44.窓越しのクラス



最近のひそかな楽しみ。それは、1年7組の窓から向こうのクラスをのぞき見すること。別に、毎日毎時間ずっとのぞき見してるわけじゃない。私があの教室を見るのは、毎週月曜日の昼。何の時間かって、それはもちろん、愛しの彼氏ががんばっている時間である。要するに、野球部のミーティングの時間。


ここからのぞいていると、花井はみんなに信用されてるんだってことがよくわかる。中学のときから主将だっていうから、板にはまってるのは確かにそうなんだけど、そうじゃなくて…本当にみんなをちゃんとまとめてるんだなって思う。


やっぱり私は、野球部で、主将としてがんばってる花井が好きなんだ。


「ちょっと、またカレシ見てんの?」
「うん、見てるよー」
「あきないねぇ」
「あきませんよーだ」


正面に座る友達を放って、お弁当を口に運びながらまた向こうをのぞく。みんな真剣な顔で監督の言葉に聞き入っている…かと思ったら、田島がうとうとしかけていて、それを花井が怒鳴って起こした。


「あー、あの怒られてる人、田島君だよね?」
「うん、そーだよ」
「いーな、は。誰か野球部紹介してよ」
「とかいって。応援いくの嫌がるくせにー」
「だぁってー」


言い争っていると、野球部のほうでもひと悶着あったみたいで、三橋と水谷が立ち上がっていた。それをなだめようとして花井が立ち上がった瞬間、なぜかこちらと目が合う。思わず二人であ、とつぶやいてしまった。


「ん、どしたの?」
「目あっちゃった」
「何よそれ、のろけー?」
「違うよ!」


からかう友達が大笑いしていると、どうやら向こうでも私たちと同じようなことになってるみたい。花井がみんなに囲まれて、顔を真っ赤にしている。そのうち水谷がひょっこり顔をだすもんだから、野球部全員が私のほうを見て手を振りはじめた。私はそれに答えて手を振りながら、花井に小さくウインクをした。









(要するにラブラブってことで)









2008.01.06 sunday From aki mikami.