臭い。死ぬ。っつーかなんだよ、この臭い。臭いとは聞いてたけど、これマジでこの世のもんじゃない。硫黄って、火山とか温泉とかのあれだ。オレ、今後一切温泉にも火山にもいかねー!
理科の実験なんて、もうやりたくねぇ、と思った。一年のときやった砂糖と重曹使ったやつはいーけど。あと中学のときのべっこう飴は最高だった!(よーするに食えりゃいい)
4人ずつの班に分かれて実験…だけど、参加する気になれなくて、オレは机に突っ伏していた。さっき先生に頭叩かれたけど、かまってられっか。だってこーでもしねーと、臭くて死にそうだ、マジで。
「…あの……」
頭上から控えめに掛けられた声に、吐き気を抑えながら顔を上げる
「あぁ、…なに?」
同じ班の。実験ちゃんとやれ、とか言われんのかな。めんどくせー。
「あ…の、具合、悪いの?」
「え?あぁ…まぁ」
「この臭い、キツイもんね」
「おう」
「あの…これ」
そう言って、はハンカチを差し出した。一瞬なにが起きたか良くわからなかったけど、もしかして、使えってこと…なんだろうか。
「あ、お、下ろしたてだよ!一回も使ってないから!」
「あ、いや…それはいいんだけど… その、つかっていーの?」
「……うん」
「え…と…」
よくわかんない、けど、…受け取っていーのか?いーんだよな?
「あ…さんきゅー」
「うん…」
照れたように笑う。うわ、な、なんかオレ…すげー恥ずかしくなってきたぞ!?
黒い机の向うに座って、はまた実験を続けた。途中こっちに視線をくれて、薄く洗う。今まで全然意識してなかったけど、良く見たらって…かわいくないか?
「オイ準太、顔赤いぞ?」
隣に座っていた友達が、ニヤニヤしながら覗きこんできた。
「う、うるせぇ!」
「ちょっと、ちゃんとやってよ二人とも!」
同じ班の女子もう一人が、俺達の方を睨んできた。それを見て、はくすくす笑っている。ってオレ、のこと気にしすぎだろ!って思うのがすでに気にしすぎなんだけど…ああくそ、調子狂う。
気が付いたら、臭いなんてどうでもよくなっていた。
2007.12.27 thursday From aki mikami.