51.お昼はオムライスと唐揚げで



「おじゃましまーす」
「はーい」


奥からおふくろの声が聞こえると、は嬉しそうに靴を脱いで、どたばたと騒がしく入っていった。両手いっぱいに抱えたみかんを差し出して、おすそわけです、と笑う。のおばさんは実家が果樹園なので、時々大量の果物が送られてくる。で、あんまり大量すぎて食いきれないので、よくうちにおすそわけにくるわけだ。


「あら、ありがとうちゃん」
「いえー、またいつものでもうしわけないです」
「そんなことないわよ。孝介なんて一人でほとんど食べちゃうんだから」
「おー。産地直送はうめーよ」
「あはは、そりゃーよかったわー」


テーブルの上にみかんをおいて、楽しそうにオレを振り返る。その顔を見てオレは、よく笑うやつだなー、とか思った。


「ねぇ孝介」
「ん、何?」
「お母さん、明日ちょっと早く出かけなきゃいけないのよ。だからお弁当作れないんだけど」
「あー、いーよ、金くれれば」


たまにはパンでもいーな、と思いながらみかんに手を伸ばすと、があの、と口を挟んだ。


「私作りますよ?」
「え、ちゃんが?」
「はい!」
「でも…朝早いわよ?」
「大丈夫です!早起き得意なんで!」
「…うそつけ」
「なーによー!お弁当いらないわけ!?」
「ま、お前が作りたいっていうんなら作らしてやってもいいけど」
「その言い方、むっかつく。おばさん、明日お金あげなくていーですよ!」
てめっ、」
「こーくんのばーか!」


オレの手の中からみかんを奪いながら二階へとかけていく。また勝手に人の部屋に入ってベッドの上陣取ってマンガ読む気だな、あいつ!先を越されまいとみかんをひとつ持っての後を追う。しかしのやつ、意外に足が速くて、オレが部屋についたころには当然ベッドの上に大の字で寝そべっていた。


へへーん、また勝ったー、とかいいながら仰向けになって、机の上のマンガを手に取った。こうなると、オレはいつもベッドの端っこにちんまり座るしかなくなる。オレの部屋なのに、ちくしょー!




(明日のお弁当のメニュー)









2008.01.06 sunday From aki mikami.