こっちには玄関がある。私は迷わず左に曲がった。空気が少しずつ冷たくなってきて、外の明かりが漏れる玄関に辿り着く。するとそこに、靴箱から靴を取り出す白馬の姿が見えた。
「白馬!」
「え、!?」
自分が追いかけていたはずなのに、いつのまにか追いかけられる立場になっていたせいか、かなり驚いた白馬が振りかえった。出した靴を放り出して、上靴も履かずにこちらにかけてくる。
「どうして…」
「あ、謝りにきたの…」
訳がわからないだろう。白馬は首を傾げている。私は自分の心に、呼びかけた。
なんて伝えればいい?ごめんなさいだけじゃ、わかって貰えない。落ち着いて、考えていることをちゃんと言わないと。
「―――ごめんなさい」
まず、ひとこと。
「私、白馬に甘えてたの。…甘えてたくせに、文句ばっかりいって、ごめん」
頭を下げる。そんな私に、白馬は僅かにうろたえた。
「どうしてが謝るんだ?」
「だから、文句多いから…」
「別にいいんだ。文句をいってくれるってことは、僕を求めてくれてるって証拠だから」
「……え?」
顔をあげると、白馬はふわりと笑った。
「僕に不満があって、それを直してほしいから文句を言うんだ。だから、僕のすべてが嫌われているわけじゃなくて、いやなところを直した僕を、好きになってくれるから、文句をいうんだ」
「……白馬…」
「だから、これからも文句だって、不満だっていっていい。ただ…」
「た、ただ?」
「逃げるのだけは、やめてくれないか?」
くすくす、と笑いながら、白馬が言った。
「…うん」
頷いて、私は白馬に抱きついた。
ちゃんと、口で伝えればよかったんだ、初めから。言えばちゃんとわかってくれる人なんだから。
ありがとう、白馬。
Ending 10
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言葉
頭がいいから理解力はある。だから、口で話せばちゃんと通じるんだと思います。