思わず目を瞑って、その場に屈んだ。…けど、いつまでたっても衝撃はやってこなくて、変わりに頭上でボールの弾かれた音がした。
恐る恐る顔をあげる。すると、そこには…
「は…白馬…?」
「大丈夫ですか、」
「だ、大丈夫…だけど…」
サッカー部員がやって来て、すみません、とあやまっていった。白馬は気をつけたまえ、と少し怒ったように言ったが、すぐに私に向きなおる。
「…よかった、に怪我がなくて…」
「で、でも白馬…手…」
私の代わりにボールを弾き飛ばしてくれたらしい。白馬の右手は、青くあざになっていた。
「あぁ、これくらい何ともないよ」
「なんともなくない!すぐに冷やさないと…!」
「わっ、!」
白馬の手を引っ張って、水道まで連れていく。ポケットからハンカチを出して濡らすと、彼の手に巻いてやった。
「ありがとう、」
「それはこっちの台詞。…ありがとう、白馬」
「いえ」
「……ねぇ、白馬」
「ん?」
自分の手からゆっくり顔をあげた白馬。
「…ごめん」
「…?」
「私、贅沢だったかも…白馬は私のために色々してくれてるのに…」
「それは…誰に噴きこまれたの?」
「え?」
「黒羽君…かな」
「な、なんでわかったの…?」
「なんとなくだよ」
くす、と笑うと、白馬は私の頭を撫でてくる。
「もしそう思ってくれるなら…今日一日、付き合ってくれるかな?」
「…いいけど…ゆっくりしたい」
「ゆっくりね…。なら、僕の家に来て、二人でお茶でもしようか」
「…うん」
頷くと、白馬は私の額に、優しいキスをくれた。
何だか、嫌がってたくせに結局、一緒にいられることが嬉しいんだなって思ったら、悔しかった。でも、今日一日二人でゆっくり出来るなら、それでいい。
左手を差し出したら、握り返してくれた。
Ending 8
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左手のぬくもり
ゆっくりとか言って、結局ゆっくりさせない探くんでいてほしいです。