Merry Christmas!! 12/25



クリスマスといえばやっぱり恋人同士で過ごすのが普通…のはずなのに、どうしてコイツはこんなに空気が読めないんだ。右隣に座る萩間の顔を見ながらそんなことを思った。


12月25日、せっかくのクリスマスだからと浅葱の家に出かけたら、なんと萩間がそこにいて、クリスマスパーティしましょー、何て言い出して、浅葱も呆れはするものの止めることはせず、結局今に至ってしまった。


男二人は酒が入ってすっかり酔っ払い、お互い好きな話を延々としゃべっている。…会話しているはずなんだけど、どうしてかお互い自分の話をしたがって、結局話がかみ合わないのだ。私はそんな会話を黙って聞きながら、小さくため息をついた。


普段なら私もほろ酔い気分で話に参加するところだけど、今日はとてもそんな気分になれない。…だって、クリスマスだよ?どう考えてもおかしいでしょ、萩間の存在!しかもコイツ、さっきからうつらうつらしてて、今にも寝そうなんですけど。散々迷惑かけといて最後には寝るのか?


なんて思っていると、萩間の肘がテーブルからかくんと落ちた。手に持っていた缶ビールがフローリングの床にこぼれる。けど本人は寝ているので当然そのことには気づいていない。


私は萩間のかわりに缶を拾い上げると、テーブルの上のティッシュを数枚とった。…思ったよりこぼれてないみたいだ。


しゃがんだまま身体を伸ばしてゴミ箱を掴むと、その中にビール漬けティッシュを捨てた。萩間のデカイ身体が非常に邪魔くさい。横腹を膝で軽く蹴飛ばしてやると、うーんとうなりながらその場に横になった。もっと邪魔くさいわ!


多分このまま朝まで起きないんだろう、やれやれと思いながら寝室へと向かう。布団くらいかけてやらないと、今日は冷えるって天気予報で言ってたし。薄い毛布を持ってきてかけてやると、膝を抱えるように丸くなった。お前は猫か。


とりあえずほっと落ち着いて座りなおす。ホント、萩間は世話がやけるんだから。…なんてことを考えていたら、突然背中にずしんと何かがのっかった。…この状況なら一人しかいない。


「…浅葱、何?」


浅葱が私の背中に全体重をかけてのっかり、首に腕を回していた。…乗っかられてもあまり重くないのが悔しい。


「…


酒臭い浅葱の息が耳元にかかってくすぐったい。


「だから、何?」


首を少し回して振りかえると、頬にキスをされる。…ヤバイ、コイツホントに酔ってる…。


「浅葱、もう寝よっか。明日二日酔いになるよ」
「…うん」


浅葱が答えたので立ち上がろうと膝に力を込める。けど浅葱は私をぐっと引っ張って振り向かせ、突然深いキスをされる。あまりに突然で息を吸う暇がなくて、苦しいと胸を叩いて訴えるけど、全然解放してくれない。…酔ってるとそんなこともわからなくなるのか。


唇が離れると同時に深く息を吸い込んだら、唾が器官に入って咳き込んだ。そんな私を浅葱は軽々持ち上げると、その足で寝室に向かいベッドの上に落とされる。そして私の咳が収まると、もう一度深いキスが降って来る。私は浅葱の肩を強く押して何とか少し距離を離した。


「…ちょっと、萩間いるでしょッ」
「さっき寝るって言っただろ」
「寝るってそっちの寝るじゃないから!バカじゃないの?ってかキャラ違うんですけど!」
「うるさいな。…僕にだってこういうときもあるんだよ」


すねたような表情で言う浅葱。…なんか、可愛いんですけど。酔ってるせいで顔も赤いし…って、これじゃあまるで私が発情してるみたいじゃん!


「だめだめだめ!萩間起きたらどうすんの!」
「見せ付ければいいだろ」
「バカ!そんなことできるわけないでしょ!」
「もううるさい。…が静かにしてれば問題ないだろ」
「そうじゃないでしょ!もう、離して浅葱!」
「いやいやー、そのまま続けてくださいー」


間延びした声が入ってきて、一瞬場が凍りついた。浅葱がゆっくりと後ろを振り返る。


「…俺もう帰るんで、どうぞお楽しみくださいー」
「! 萩間!」


私が叫ぶのもむなしく、萩間は向こうの部屋へ消えていった。そして少しすると、ばたん、と玄関のドアが閉じる音が聞こえる。


「……ってことで、もう邪魔者はいなくなったし…」


いいよね?と聞いてくる浅葱。だけど、いいわけないでしょ!


「よくないよ!萩間どうすんのアレ!すっごい恥ずかしいんですけど!」
「気にしない気にしない。萩間だしね」
「萩間だしねって、何それ!ってかなんでそんなにしたがるわけ!?」
「何でって、…さっきからずっと不満そうだったろ」


浅葱の言葉に、次の言葉が出てこなかった。…ずっと酔っ払ってると思ってたのに、だまされた?そんなことない。酔ってなかったら浅葱はこんなことしない。だったら…


酔っ払いながらも、私のこと考えてくれてたの?


じんわりと目の奥が熱くなって、両手で顔を隠した。何でこんなことで感動してんの私!必死で涙を止めようとしていたら、手を浅葱に掴まれて顔の横に押し付けられる。


「…泣き顔、はじめてみた」


こんなに一緒にいるのに。そういった浅葱の目が、少し熱っぽい気がした。


「…見るな」
「見たい」
「何でよ。このドS」
「そうかもね。…で、そろそろいい?」


メガネをとって、ベッド脇のデスクに置く。…キレイな顔が、じっと私を射抜いている。


うん、と言い終わる前に、二人の唇が重なった。




(勢いが大事)


…何だコレ!っつーか萩間くん空気読め!(笑)でも萩間君は空気読めない方が萌えるかも(死ね)。









2009.01.07 wednesday From aki mikami.