Merry Christmas!! 12/25



いつもは騒がしい万事屋も、二人だととても静かで穏やかだ。…と言うのも、神楽ちゃんと新八くんがわざわざ気を利かせてくれたからだったりして。そんな二人のおかげで、今日は思い切り二人の時間を楽しむことが出来た。銀さんも何だかんだで優しくて、どこにいきたいとか何がしたいとかを、ちょっとだけぶちぶち言いながら付き合ってくれたりして。


そうやって一日を過ごしてすっかり陽も暮れてしまったころ、私たちは大江戸マートで買い物をした。銀さんのわがままでいちご牛乳とアイスを買って、二人荷物を抱えてお店から一歩踏み出したとき。


「雪…!」


空から舞い降りる白い結晶。私たちはその場に立ち止まり、同じように上を見上げた。


「キレイ…」
「そうだな」
「ホワイトクリスマスだァー…」


銀さんとのはじめてのクリスマスで、はじめてのホワイトクリスマス。…急に嬉しさと恥ずかしさが込み上げて来て、思わず銀さんを見上げた。…けど。


「……何、その顔」


私は銀さんの肩を強く叩いて、そのままふらりと歩き出した。銀さんが焦ったように追いかけて来る。


「待て待て待て!なんだ俺なんかしたァ!?そんな変な顔してないよね?雪見てただけだしィ!ねェちょっとッ!?」
「………」
「って無視かよッ!ちゃぁーん!!」
「知らない」
「知らないって何!ねェ俺ホント何した?マジで身に覚えなくて」
「もういい。話しかけないで」
「はァ?なんだよそれ!オイオイお前いい加減にしろよ、なんで怒ってんのかわかんねーとなおしようもねーだろーが!」
「………」
「オイッ!」


瞬間強く肩を引かれて、銀さんの腕に抱き締められた。その拍子に…堪えていた涙が一気にこぼれ落ちる。そうしたらもう抑えることは出来なくて、堰をきったように次から次へと涙が流れた。


「え、お前ちょ、泣いてんの…?」
「…っ」
「うわわわわ、マジゴメン!何したかわかんねーけどマジでゴメン!ホント謝るから…だから泣くなよ」
「…っ…ふっ」
「あのさ…?教えてくれねーかな?俺どんな顔してた?」
「ぅッ…っ」


銀さんが、肩を少し離してのぞき込んで来る。…私は、喉元でつっかかっている声を絞り出した。


「銀さん、がっ…時々するッ…顔」
「え…?」
「……すべて、にッ…後悔して、るっ、みたいな…」
「…ッ」
「その顔…嫌」


銀さんが、色んな闇を抱えてるのはわかってる。…いろんなことを考えて、いろんな後悔をしてるってわかってる。だけど…そんな昔を思い出している顔が、今にも消えてしまいそうに見えて。


…すごく、切なくなる。


「…わりィ」


耳元でそう小さく呟くと、優しく頭を撫でてくれる銀さん。…そこからじわりと温もりが伝わってきて…それと一緒に、銀さんの切なさも伝わってきて。私は銀さんの背中に腕を回して、強くしがみついた。


「銀さん…悪くないよ」


悪いのは私だよ。…こんなに近くにいるのに、銀さんの心を癒して上げられない私が悪いの。…だからこんなに悔しくて、涙が出るの。


「銀さん…私、…頑張るよ」
「何をだよ」
「銀さんが、嫌なこと全部忘れちゃうくらい…銀さんのこと笑わせて見せるから」
「…ばーか、何言ってんだよ」


首筋に軽く唇が触れたかと思うと、肩を抱いたまま万事屋の方へと歩き出す。…横から見た銀さんの目は、どこかゆらゆらと揺れていた。


「お前はただ俺の隣にいるだけでいいんだよ。…それだけで、俺は毎日楽しいの」
「……嘘ばっかり」
「ホントだっつーの。…だから、もう泣くな。な?大体俺のことでお前が泣いてどうすんだよ」
「だって…」
「だってじゃねーよ。…な、俺のことを思うんなら、笑っててくれ」


優しい笑顔が覗き込んでくる。…だけど目だけがどこか切なくて、それにまた涙が出そうになった。




(切なさの共有)


銀さんはあまり弱みを見せないだけに、時々見せる表情がとてもこたえるのでは…という妄想から生まれた産物。ハッピーエンドじゃないなァ。ごめんなさい。









Merry X'mas!!
2008.12.25 thursday From aki mikami.