さらりと頬を撫でていく風。
少し先の桜の木の下で眠っているに目をやった。





さくら






りんや邪見は、今日の昼食をとりに出かけている。
都合がいいと、そんな風に思うのは何故だろうかと思った。


安らかな寝顔。
その頬に触れてみて、殺生丸はスッと目を細めた。




「(少しの警戒もない・・・か・・・)」




警戒とまでは行かずとも、少しは反応もしてほしい。
そう思うのだが、
わざわざ起こす気にもなれないので
とりあえず隣に腰を下ろしてため息をついた。


こんなにまでに心を許すようになったのはいつからだろうか。
そんな風に考えて、少しだけ自分に嫌気がさしてくる。


以前ならば、人間どころか妖怪ですら、
信頼するなど殆どなかったというのに。
それが人間・・・それも女に、信頼感を抱いている。




「どうしたものか・・・」




知らぬ間にそうつぶやく殺生丸。
それは自分に対してでも、に対してでもあった。


すると。




「なぁにが?」




そんな声が聞こえ、少々驚く殺生丸。
目の前ではが、意地悪い笑みを浮かべていた。




「ねぇ、なにが?」
「・・・起きていたのか」
「今、起きたの」




そう言って、大きく伸びをする
殺生丸は内心やられたと思いながらも、
彼女にわからないように溜め息をついた。




「・・・お前には教えぬ」
「え~!?なんで?」
「教えたくないからだ」
「酷い・・・」




口を尖らせて言う
殺生丸はそれに嘲笑を浮かべると、スッと立ち上がった。




「そうだな・・・。
あと十年経ったら、教えてやってもよい」
「十年!?そんなに覚えてないわよ!」
「それを分かって言っている」




勝ち誇った笑みを浮かべる殺生丸。
は完全に負けた気がして、とりあえず恨めしそうに彼を見ていた。


さくらの花だけが、そんな二人を見守っていた。






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