窓の外を、雨がつたっていく。それを見てため息をついたのは、阿部の恋人、だ。


雨が降ったら、室内での練習。つまり、当の昔に学校を卒業してしまったは、練習風景を見ることができないのだ。だから黙って家に帰ってくるしかない。まぁ入ろうと思えば入れないことはない。だが、毎度毎度、雨のたびに校舎に入るのはさすがに気が引けた。


いつもは、阿部のことをからかってばかりいて、自分のほうが年上で、阿部のほうが自分に依存していると、周りにも阿部本人にも見せかけてきている。が、現実にはそんなことは無い。だって、十分阿部に依存している。だからこうして会えないと、ため息ばかりが漏れる。


たまには会わない時間も必要だとわかっていても、つい会いたくなってしまう。だから、外で練習がある日はほぼ毎日通って、先輩であるモモカンと話しながら阿部の姿を眺めている。


さぁ、こんな雨の日はどうやって時間をつぶそうか。


そう思ってもそうそう名案が浮かぶはずもなく、ケータイに手を伸ばす。すると、サブディスプレイが光っていて、その光の色から、着信が来ていることを教えていた。


ディスプレイに表示された名前に、思わず目を見開く。


「もしもしっ、隆也っ!?」
『あー、?』


隆也の声だ。
そう思ったら、うれしくて全身の力が抜けた。


「どうしたの、隆也」
『いや…あのさ、お前、今日家にいる?』
「え?う、うん…まぁ」
『じゃーさ、部活終わったら…行っていい?』


どこか探るように聞いてくる阿部。だがそんな聞き方をしなくても、の答えは当然決まっている。


「…いいよ」


素直に喜ぶのが恥ずかしくて、少しそっけない言い方をした。しかし阿部はそれを気にしていないらしく、わかった、と少し高めの声色でいった。


(雨の日の電話)









2007.07.20 friday From aki mikami.