「…ひどい雨」


殺生丸が見つけた横穴で、雨宿りしている。膝の上ではりんちゃんと、すぐ隣に邪見が私に頭を預けて眠っている。殺生丸は私の迎え側の壁に背中を持たれている。


「殺生丸も寝たら?私、火の番してるから」
「…いや、いい」


そうひとこと返して、彼は外に目をやった。不規則に振り続ける雨が、何だか眠気を誘う。


「…それより、お前が寝たらどうだ」
「え…?」
「眠いんだろう」


私の様子を見ただけで、きっとわかってしまったんだろう。…彼はいつも鋭くて、私がいくらごまかしても無駄なんだ。


「…わかっちゃった?でも、大丈夫。私は夜寝るから。それにいま寝たら夜眠れないでしょう?」
「どうせ今日は、このまま出発出来そうもない。いつ寝ようが同じことだ」
「そうかもしれないけど……殺生丸が寝ようよ。貴方も、相当疲れてるでしょう?」


最近、彼は戦い詰めで、それなのに、私たちに気を使って夜は起きててくれるから、あまり眠っていないことはわかっている。だから、こういう時こそ殺生丸にちゃんと休んで欲しい。

そう説明したら、殺生丸は、なぜかゆっくりと腰をあげた。


「―――あとから文句をいうな」


そうひとこと言って、私の隣まで歩いてくる。…そして。


「――!」


私の肩に、頭を預けた。


「せ、殺生丸!」
「お前が休めといった」
「だ、だからって!」
「文句をいうなと言っただろう」


反論不可。こうなった彼は、てこでも動かない。温もりが肩を通して、全身にじんわりと伝わった。


「…殺生丸…?」
「なんだ」
「―――うぅん…なんでもない。…おやすみなさい」
「…あぁ」


低く、彼は答えた。それから少したって、小さく寝息が聞こえてくる。


幸せだな、と思う。こうしてみんなといられることが。彼の温度を感じられることが。


彼の白銀の髪に、そっと口付けを落とした。









WEB拍手ありがとうございます。とても励みになります…!こんなしょーもない夢ですが、これからもたくさん描いていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします…!









2006.07.17 monday From aki mikami.