※2010年誕生日夢と微妙につながっていますが読まなくても大丈夫です。







今日は沖田隊長の機嫌がすこぶる悪いらしい。あちこちに八つ当たりの被害にあった人が転がっている。まあ八つ当たりじゃなくても被害者は常にいるんだけど、今日はその量が半端じゃない。無事なのは外回りに行っていた土方さんと、お妙さんをストーキングしていた近藤さん、非番で出かけていた私くらいじゃないだろうか。まだ夜の8時だというのに、こんなにしーんと静まり返っている。…ってか、何したらこんな状態になるんだ。


無事な3人でぼーっと突っ立っている。その姿はある意味滑稽だろう。何も言えず乾いた笑いを浮かべていると、土方さんがゆっくりとタバコに火をつけた。


「…オイ」
「…」
「オイ
「え、私!?なんですか!」
「オメー…総悟に何言った」
「はッ!?」


意味がわからない言葉に思わず土方さんを振り返ると、ものすごーく引きつった顔でこちらを見ている。…いや、そんな顔で見られても困るんですけど。助け舟を求めるつもりで近藤さんを見ると、土方さんとまったく同じ顔をしている。


「イヤイヤイヤイヤ…何ですか二人して!」
「いや、だってねェ」
「いや、だってなァ」
「だってねェ、じゃないですよ!何で私が元凶みたいな顔されなきゃいけないんですか!」
「なんでって…総悟がこんだけ怒り狂うことなんて他にないだろうが」
「うん、そうだな」
「そ、そうですか…?」


何で隊長が私のことで怒るんだろうか。わけがわからない。ってか私何もしてないし言ってないし…。今朝あった時だって普通に…


あ、 あ…、
もしかしてアレか
今朝隊長のお盆の上から牛乳かっぱらったヤツか!
いやでもあれは隊長の方が先に私のパンをとったからだし…
でも他に思いつかないし…


「…何かあるんだな。心当たり」
「…今朝、隊長の牛乳勝手に取りました」
「「は?」」
「いやでも!あれは隊長が先に私のパンを取ったからで…!」


私だけが悪いんじゃないもん!むしろ隊長がわるい!


「いや、ちがうだろ…」
「うん…違うな」
「え?」


ち、違うの?でも他に心当たりなんてないです。


「じゃ、じゃあ…他に何があるって言うんですか?私ホントに何にもしてないですよ」
「…ためしにオメーの今日一日の行動を言ってみろ」
「今日一日?えっと…屯所でご飯食べて、洗濯して…それから銀さんとこに…」
「万事屋か…」
「なるほど、それだな」
「え…銀さん?」


私が銀さんとお出かけしたこと?それに、こんなに怒ってるの?それって…


「や、やきもち、ですか?」
「だろうな」
「えェ!でも私たち付き合ってるわけじゃないし、それにいつもブスブスって…!」
「好きな子ほどいじめたいってやつだろ」
「えッ…! そんな… こと…」


いきなり言われても。
顔が急激に熱くなっていく。こんなにいきなり、本人のいないところでこんな話聞いちゃって…どうしたらいいの?ってか、あれ?私、隊長に銀さんと会うこといってないけど…


「あ、あのー…」
「あ?」
「私、銀さんと会うなんて一言も言ってなかったと思うんですが…」
「見回り中に見かけたとかじゃねえのか」
「ちなみに…どうして万事屋とあっていたんだ?」
「え、な、なんでって…えと…」


…なんか、この状況だととても言いづらいんですが……


「先日の私の誕生日に…隊長にネックレスをもらったんですが…」
「何!総悟にか!」
「え、は、はい…」
「許さん…許さんぞォォォォ!」
「は…?」
「18歳で恋愛なんて!男女交際なんて!お父さん許しません!」
「いや、近藤さ…」
「許しませんよォォォォォォ!!」
「…とりあえず近藤さんはほっとけ」


ものすごーく呆れ顔の土方さんがそういって、近藤さんを縁側から庭へ落とした。ふご、という声が聞こえたけど、気にしていたら話が先に進まない。


「つまりオメーは、もらったネックレスのお返しでも買いに行ったと?」
「そ…そうです…。で、隊長の喜ぶものが良くわからなかったんで…同じドSの銀さんならわかるかなァ…と…」
「なるほどな。あとオメーら、変なトコ行ったり、変なコトしたり…こう、総悟が誤解するようなことしなかったか?」
「え?えーっと…あ、そーいえば、大人の玩具がなんたらっていって、店の前まで連れてかれましたね。ぶん殴って拒否したので、中には入ってないですが…」
「店の前でも十分だな」


ゆっくりと煙を吐き出した土方さん。…原因がわかったのはいいんですが、いまどうすればいいんですか。解決策がわからないことにはどうしようも…



「は、はい…」
「オメー、そのプレゼント今持ってるか」
「え、も、持ってますけど…」
「じゃあ渡してこい」
「えッ……ええええええ!!!」
「それが一番手っ取り早い」


え、いや、そうかもしれないですが、こんな怒り狂った人相手にどう話を切り出せと!?切り出す前に斬り出される気がするんですが…!第一怖すぎる…!


「無理です!」
「心配するな。オメー相手に手荒なマネはしねーはずだ」
「いやあんたの目は節穴ですか!いっつもされまくってるじゃないですか!」
「こまけーことは気にすんな」
「細かくねェェ!」
「それより…おでましだぜ」
「ッ…!」


私の後ろを指差して引きつった顔をする土方さん。…恐る恐る振り返ると、そこには。


「…!」


怒っているのに、なぜか悲しそうな顔をした沖田隊長。


「……隊長」
「何してんでィ」
「ッ…隊長!」


どうして、なんでそんな顔。
とても見ていられなくて、隊長に駆け寄って抱きついた。土方さんと近藤さんがすごい声を上げている。


「何ねぼけてんでィ」
「隊長こそ、何ですかその顔」
「オメーみてェなブスに顔のこと言われるとはなァ」
「そーいう問題じゃないです!」


少しだけ身体を離して、隊長の目をじっと見る。…そんな悲しそうな顔、しないでほしい。私は、いつも飄々とした、無表情で人をなぶれるくらい感じの悪い、あの表情じゃないと落ち着かないの。私をいじめる時の、あの楽しそうなにやけ顔でもいい。だから、お願い。


そんな顔、しないで。


「…隊長」
「なんでィ」
「好きです」
「…!」


目を見開いて、驚いた顔をしている隊長。自分でもとんでもないことを言っているのはわかってたけど、隊長の顔から悲しみが消えるなら何でもよかった。


「…何、ねごと言ってんでィ」
「ねごとじゃないです」
「だって、オメーは旦那と…」
「違うんです!」


ふところから今日買ったばかりのプレゼントをだして、隊長に握らせる。


「…コレを買うの、付き合ってもらってたんです」
「…」
「こないだ隊長にもらったネックレス…すごく嬉しかったから。何か、お礼がしたくて…」
「…」
「でも、男の人へのプレゼントなんて考えたこともなかったから…」
「…」
「だから、その…」
「もういい」


隊長の言葉と同時に、強い腕が私を包んだ。ぎりぎりときしむ位の強さなのに、温かさがなんだか心地いい。


「…もうわかった」
「…隊長」
「好きだ」


耳元で、私にしか聞こえない声でささやいた隊長。


心臓が高鳴る。


「…た、隊長」
「なんでィ」
「あ、あの、…後ろの二人、が」
「気にすんな」
「いや気にしますよ…!」
「んじゃ、どっか行け土方」
「んだとコラァ!散々迷惑かけといて…!」
「ちょ、ちょっと二人ともやめて!それより隊長!みんなのところに謝りに行かないと!」
「は、なんで?」
「なんでって…こんなボロボロにしちゃって何言ってんですか!」
「いつものことだろィ」
「いや余計ダメでしょう!」


何開き直ってんのあんたはァァァァァ!


…つっこみどころ満載だけど、…でも、隊長の顔はいつもどおり、飄々とした、意地悪な顔に戻っていた。ニヤニヤと笑って私の腕を引っ張り、土方さん達にひらひらと手をふる。近藤さんが男女交際云々ってまだ言っていたけど、今はそんなこと気にしない。


隊長がくれた、好きって言葉。それがとても温かく、胸の中で輝いていた。









アトガキ。


web拍手ありがとうございます。
初めての総悟短編でした。どうでしょう。微妙に2010年誕生日夢とつながっていますが別に読まなくてもわかると思います。あはは。


最近総悟の連載をしようともくろんでいるのですが、時間がとれないのと文章がまとまらないのとで全然進みません。そのうちまとまればアップすると思います。原作沿いの予定なんですが…うまくいくかなァ。


ほかの連載も早く終わらせてしまいたいなァ…と思いつつ、本当に文章が考え付かなくて、もう私の能力もかれましたね。悲しいです。それでもあきらめずにちまちま書いていきたいと思っています。どうか生温ーい目で見守ってあげてください。


とにかくココまで読んでくださってありがとうございます。引き続き、雪見酒をよろしくお願いします。









2010.09.13 monday From aki mikami.