6時間目が終わって少ししてから、私と友里はグラウンドへ向った。もちろん昨日予告した通りに、野球部の見学に行くためだ。でもさすがに制服でグラウンドに入っていくのは恥ずかしいので、フェンス越しにひっそり見ることにした。


今はバッティング練習中らしい。ボックスにはたぶん田島くんが入っていて、自分が言ったところに正確に打球を返している。こーくんが、田島はすげぇよっていってたけど、こうして実際にみてみると本当にすごい。


「ねぇ友里、田島くんいいかもよ?すっごい野球上手だし」
「んー…田島くんって、のクラスの人でしょ?野球のときはカッコイイけど、普段はちょっとね……」
「え、田島くんすっごいいい子だよ?」
「なんかさー、カッコイイってよりカワイイって感じしない?」
「……そうかな」
「そうだよ!私ね、カワイイ人よりカッコイイ人が好きなんだよねー」


そう言いながら嬉々として田島くんのバッティングを見ている友里はよくわからない…と思ったけど、いつものことと言えばそうなので、ふーんと聞き流しておいた。


田島くんがボックスから出ると、次には巣山くんが入った。田島くん意外の人はみんなセンター返しが基本みたいだけど、私にして見ればセンター返しが出来るだけでもすごいと思う。もちろんそれは初心者の意見、なんだろうけど。


友里は真剣にみんなの練習を見ている。そこまで力を入れて見てる人を他に見たことがなくて、何だか笑えてきてしまう。真剣すぎだよ、と言ったら、オトコ探しも妥協しないの!なんていわれた。


「野球部って好きなんだよねー、がんばってる感じで」
「あ、わかるー。やっぱ頑張ってる人ってカッコイイよね」
「うんうん。…あ」


気がつくと、ボールが破れたフェンスを越えて私たちの足元に転がってきた。向こうで巣山くんがやっべぇ、と言ったのが聞こえる。それに対して、近くにいたこーくんがオレ拾ってくるよ、と言った。私たちに気付いたみたいで、あれ、と言いながらかけてくる。


「マジで見にきたんだ」
「うん。予告どおりにね。練習お疲れさん」
「おー。で、ボールは?」
「これ…」


友里がフェンスからボールを投げ入れると、こーくんはそれをキャッチしてサンキュ、と笑った。カッコつけんなー、といってやったら、うるせぇ、と言われたから、バーカバーカと言い返してやった。


こーくんが走って戻っていくと、友里がいきなり私の服を掴んで揺さぶってきた。


「ねぇねぇ、あの人っての幼なじみだよね?」
「え、そうだけど…」
「でさ、のクラスの人だよね?」
「うん、そうだよ」
「…もしかして、付き合ってるとか?」
「ち、違うよ!ぜーんぜんそんなことないよ。ただの幼なじみ」
「…そっか」


そういった友里の表情が、なぜかほっとしたように見えた。なにに、なんて、決まってる。私とこーくんが付き合ってないことに、だ。


めまいがした。今まで全然考えてこなかったから。幼なじみって関係があることに、安心していたのかもしれない。


友達と、同じ人を好きになるなんて。