殺生丸



急に、夜中に目が覚めた。


普段の殺生丸は夜中に目が覚めることがほとんどない。だが、今日はなぜか知らないが起きてしまった。…仕方ないから水でも飲もうかと布団から起き上がった。


時計を見れば、深夜3時半。当然家の中も外も静まり返っている。少し肌寒さを感じて椅子にかけておいた上着を羽織ると、静かにドアを開けて部屋を出た。


…と、そのとき隣の部屋から明かりが漏れているのに気付く。隣の部屋とはもちろんの部屋だが、がこんな時間まで起きているなんて珍しい。しかも部屋のドアが、ほんの少しだけ開いている。…好奇心から、殺生丸はその隙間から部屋の中をのぞきみた。


はベッドの上に座っていた。そしてその手には、あまり見慣れないものが握られている。…編み物だ。


殺生丸はのぞくのをやめると、静かにリビングに移動した。電気をつけて、台所に立つ。


水はやっぱりやめてコーヒーにしよう。そう思い立ってコーヒーカップを戸棚から出しながら、がなぜ編み物をしていたのかを考えた。


にその趣味があったかどうかは知らない。だが、今までそれをしているところをみたことがない。…ということは、趣味ではない。ならば他に編み物をする理由は、安直に考えればプレゼントだ。そしてプレゼントといえば、もうすぐ"その"日がやってくる。……バレンタインだ。


そこまで思い至ると、先月くらいのからの質問を思い出す。


『殺生丸は灰色って好き?』


…さっき編んでいたのも灰色だった。そして形状からいっておそらくマフラー。


つまりはが、自分のために、こんな遅い時間までマフラーを編んでいる。


そう結論付けると同時に、殺生丸は右手で口元を覆った。…弧を描こうとする口を隠すために。


こうなると、お返しも考えなければ。そんなことを思いながら、逆の手で戸棚を開けて片手鍋を出した。…その口元は普段に戻っていたが、目だけは楽しそうに笑っていた。









(その姿が。)


オマケ。


「あ、あの…どう、かな」
「……ああ、わるくない」
「よ、よかったぁ…!あの、はじめてつくったから目おっきいところとかあると思うけど…」
「問題ない」
「そう?あと他にも長さとか、…あ、この辺の毛糸の継ぎ目とか!」

「…なに?」
「お前は、がんばって作ったんだろう」
「う、うん…結構」
「なら…それでいい」
「……え?」
「文句あるか?」
「い、いや、ないけど… ありがと」
「ふん」









自分が編み物大好きなので編み物ネタ。最近ロングカーディガンを作りました。意外と出来るもんですね。でもぴったり来るボタンが見つからないのです…くすん。








Happy valentine!!
2009.02.14 From aki mikami.