「…なにか…ほしいものはあるか」
「は…?」
いきなり尋ねてきた殺生丸に驚いて、はテレビから顔をあげた。
「………なんで急に?」
「お前は今日がなんの日か知らんのか」
「え?」
なんの日か?そう言われて始めて、はカレンダーを見上げる。
「あ、ホワイトデー!」
「今頃気がついたということは、お返しなどいらぬということだな?」
「えっ!ち、違うよ!欲しいですお返しっ!」
「…だったらなにがいい」
そう尋ねる殺生丸は、意外と真剣だ。はそれに面食らって、茫然と彼を見上げた。
「……………な、にが…いいかな…?」
「知らぬ。………私が聞いている」
「そうだよね………うーん…なにがいいかな…」
特別欲しいものなんてない。3年生の3月といえば、学校なんてとっくの昔に終了し、家庭学習期間から引き続いて遊び三昧バイト三昧だ。欲しいものがあれば自分のお金でいくらでも買える。
「ない…かなぁ」
「ならいらぬのか?」
「え………それは…」
殺生丸からものがもらえる機会なんて、これを逃したらないかもしれない。だからいらないとは言いたくない。は必死に思考を巡らせた。
ホワイトデー……殺生丸……恋人……
………恋人?
ふとは思い出した。学校の友達が、身につけている………
「ゆ…び、わ?」
お揃いでつけている、と自慢してきたり、そうじゃなかったりするが、のクラスでもつけている率は高かった。
「指輪…か……」
殺生丸がぽつりと呟いた。
「や、そ!それはっ、ただ友達がよくつけてるからっ!」
「……」
言葉を遮る低い声で、殺生丸が呟いた。それからあたふたしているを椅子から立たせると、そのまま腕を掴んでリビングを抜ける。辿り着いたのは、殺生丸の部屋。
殺生丸はドアを勢いに任せて閉めると、無抵抗のをベッドに放り、その上に覆い被さった。乱暴に口を塞ぎ、抗議するを無視して舌を侵入させる。
は、突然で声すら出せず、襲い来る息苦しさと快楽に耐えていた。彼の服をぐっと掴んで、目をきつく閉じる。だが、殺生丸はそんなの手を振りほどいた。
口付けはますます深くなる。苦しくて離れようとしても、殺生丸の力がそれを許さない。手首を掴まれて、ベッドに押しつけられた。
だが、急に左手首の拘束がなくなって、殺生丸の指がの手のひらを滑る。そして、するりと指に冷たい感覚が走り、は思わず片目を開けた。その瞬間殺生丸の強い視線が絡んでくる。
「………余裕だな」
唇を離すと、わざと耳元で囁いた。
「っ…だって…!」
「今は私のことだけ考えろ」
「…! ………ばか」
呟いて、目を瞑る。今度は甘く優しい口付けが降ってきて、はほどかれた両手で、力一杯殺生丸を抱き締めた。
後々、二人の左手薬指に気がついたかごめと犬夜叉が大絶叫することになるのだが、それはもう少し先の話。
きっと指輪といわれるような気がして元々買ってきていたけど、もしいらないっていわれたらいやだから確かめて見た殺生丸様。結局以心伝心でよかったですねってことですね。
2007.03.14 wednesday From aki mikami.