違和感と霊力

「殺生丸様、私はあの娘に…に、何か違和感を感じます。は一体、何者なのでしょうか…」
「ただの人間には違いない…」


言って、りんと川の水を飲むを見据える。昨晩より硬さのとれた顔をしていて、時折笑顔もある。やはり同行人に人間がいる、しかもそれが少女ということが、彼女に多少なりの安心を与えているらしい。…どうやら、顔洗いついでに朝食の魚を取ることにしたようだ。


「しかし…」


先程の殺生丸の答えが気に食わなかったのだろう。邪見は言いながら殺生丸の顔色を伺った。その瞬間、殺生丸の表情が警戒と怒りへと変化して、邪見は腰を抜かしかける。そんなに怒りを買うようなことだったかと思ったが、どうやら主の怒りは自分とは別の方向に向いているようだ。


「犬夜叉の血の匂い…」


呟いて、歩き出す殺生丸。その言葉でやっと彼の行動の意図がわかった邪見は、りんとにここにいろと言いつけて殺生丸について行こうとする。しかし、殺生丸はそんな邪見に睨みをきかせ、ついてくるなの意思を評したので、邪見の足はピタリと止まり、彼を見送った。…聞こえないようにため息をついたら、向こうから小さな小石が飛んできて邪見の頭に直撃した。






去って行った殺生丸を思いながら、邪見はぼんやり空を見上げた。そんな邪見を少し離れたところで見守るとりん。何故離れているのかというと、近づくと邪見ににらまれるからだ。…しかし、ああもあからさまに元気がないと気になってしまうのが良心を持った人間というもの。は邪見に駆け寄って、小さく笑いかける。


「邪見…元気出して?殺生丸ならすぐ帰ってくるからさ」
「お前に言われなくてもわかっておる」


すねたように邪見が答えるので、は苦笑のあと邪見を小突いた。ポンポンと頭を優しく叩くと、てれたように俯く邪見。


その時、森の方から殺気を感じて、は顔を強張らせた。


「邪見」
「う、うむ」
「りんちゃん、こっち」


りんを自分の方に引き寄せながら、地面に転がった木の棒を拾い上げる。その瞬間、木々の隙間から現れた多くの妖怪。邪見は人頭丈を構え直し、阿吽も戦闘態勢に入る。


はりんを自分の後ろに隠すと、妖怪たちに鋭い視線を向けた。最前の妖怪が、大釜を振り回して襲い掛かってきた。



2004.11.12 friday From aki mikami.
2006.03.04 saturday 加筆、修正
2008.08.13 saturday