頭の片隅で思うこと
眠りにつくを見てふっと息を漏らした殺生丸は、そのまま彼女の隣に腰を下ろした。
邪見とりんは魚を取りにいっているため、その場にはと殺生丸だけ。しかしはあれから眠ったままなので、実質彼は一人のようなものだ。
丁度良い。
そんなことを思って、空を仰いだ。
殺生丸は元々、他人といるのを好まないほうであるし…それに今日は、一人きりで考えたいこともあった。
…自分がいない間のこと。の身に起こった、謎の変化。
まるで犬夜叉の変化のようだと、殺生丸は思った。
危険になると血が変わる犬夜叉。薙刀を手にした途端人が変わったかのように妖怪を倒し始めた。
ふと思い出す。初めてにあった日に、なぜか犬夜叉と重なって見えたことを。それはの視線の鋭さだけじゃない、このせいもあったのではないか。目で見えているのとは別の力を、薄々感じていたからではないのか。
犬夜叉がどうなろうと、知ったことではない。犬夜叉が完全に妖怪の血に飲まれようと、人間になろうと、あのまま半妖でいようと。どうせいずれは殺すのだ。どんな姿で生きていようと、一族の恥さらしに変わりはない。
だがのことはそうはいかない。殺してしまうというのもひとつの手かもしれないが、いつか奈落と対峙するときのため、拾ってきた娘だ。それに戦えるというのは悪いことではない。
だが、この先彼女の変化に対処するのは自分。正直、面倒くさいと思う。だが、自分から彼女を誘ってしまった手前それを口にも出せず、内心でため息をついた。
役立つが、面倒な拾い物だ。
静かに耳に届く風の音を聞きながらそんなことを思った。をみれば、幸せそうな寝顔。恐れるものなど何もないように安心しきっている。…昨日までのあの不安は、どこへ行ったのか。
「(こんなただ霊力が強いだけの人間が、一体どんな物を隠しているのか…)」
そっと、頬に触れてみる。触れられた本人はそれに気づきもせず、ただ眠りを楽しんでいる。…彼女の中にある思いや記憶、そして不安や孤独。その断片、欠片でも。
知ってみたい
あたたかなその頬から手をゆっくり離す。まるで、名残を惜しむかのように。そのままその手を天まで持っていくと、透かす様に見てから
どうかしている
夜空に輝く下弦の月が、そんなことを彼に思わせた。
2004.11.21 sunday From aki mikami.
2006.03.04 saturday 加筆、修正
2008.08.13 saturday