気まぐれが齎す物


「刀々斎、この女に武器を打て」


そう言われた刀々斎は、目の前の人物に驚いた。何度も殺されかけたのだから当然かもしれないが、それにしても驚きすぎだ。もはや驚くの域を越え怯えている。だが、殺生丸の後ろで申し訳なさそうに立っているを見ると、その緊張を少し緩めて言葉を返した。


「…その娘に?」
「あの、と言います。私、自分の武器が欲しくて…その…」
「ほぅ。して?どんな武器が良いんだ?」
「あの、薙刀を…」
「ふむ…では材料は?」


長い顎鬚を触りながら言う刀々斎。はそれを聞き、後ろにいたりんが持っていた木の枝を受け取った。


「柄はこれで…」
「…これは?」
「朴仙翁さんの枝です。昨日もらってきて…」
「して、刃は?」
「えっ…と…」


途端、口ごもる。正直彼女もそれは気になっていたのだが、殺生丸にそのことを言うと、彼は無言のままで不機嫌そうにを睨むだけだった。


答えに困る。するとそれに割り込むように、殺生丸が一歩前に出た。


「…私の牙を使え」
「殺生丸…?」


に刀々斎、邪見が驚きの目を向ける。


刀々斎は暫く表情を固めていたが、殺生丸が不機嫌そうに顔を歪めたのを見て、うっすら笑った。


「あんた変わったな」
「無駄口は良い。早くしろ」


その言葉のあと、殺生丸と怯え気味の刀々斎が共に小屋の中に入っていく。も一緒に中に入ろうとしたが、殺生丸に押し出されてしまう。


「ちょっ…どうしてっ?」
「殺生丸様は誇り高いお方だからな。牙を抜かれる所を見られたくないのだろう」


邪見が頷きながら言う。すると、小屋の方から小さな石が飛んできて、邪見の頭に当たった。


「ずっ…図星か…」
「図星だね」


頭を抑える邪見に、くすくす笑って言う。すると再び小石が飛んできて、二人の頭に直撃した。


おろおろする邪見に、笑いをこらえる。ふん、と息を漏らすが、怒ってはいなさそうな殺生丸に、刀々斎は苦笑していた。



2004.11.27 saturday From aki mikami.
2006.03.04 saturday 加筆、修正
2008.08.13 saturday