ヘッダー画像

*#1*

chapter.1


さんと桂さんって付き合ってるんですか?」


そんな言葉を聞いた瞬間、私とヅラ、二人で思い切り振り返ってそいつを睨み上げた。


「「そんなわけないだろーが!」」


強引なキス


こんな息ぴったりの私達は、攘夷戦争時代からのなじみだ。これだけ長く付き合ってると息ぴったりにもなるわなってことで、つまり私が言いたいのは、私とヅラだけじゃくて銀時も息ぴったりなんだよってことだ。ヅラと銀時のコンビネーションは時々目を見張るものがある。


…なんて、言い訳がましいことを述べてみたけれど、実は私はヅラが好きです。って、作文?


好き、なんて本人の前じゃ死んでもいえない。どうしてかって?


そうしたら、そばに置いてもらえなくなるから。


ヅラはとっても古風な考えの持ち主だ。戦いに出るのは男、女はその帰りを黙って待つ、そんな前世代の「家」制度みたいなことを言うヅラは、私が今こうしてここにいることすらも、はじめは反対していた。要するに、お前も一応女なんだから黙って家で家事だけやってろ、ってことだ。それでも私は強引に、私の家はここだから、的なことを言ってそばにおいてもらっている。事実私、家なき子だし。あと、私がヅラの考える女らしさから、限り無くかけ離れているせいもある。


そんなんで好きなんていって、少しでも"女"を意識させてみろ、んで万が一うまく言ってみろ。絶対もうここには来るなって言われる。そんなの絶対イヤだ。それこそ死んでもイヤだ。ヅラのそばにいられないのがイヤってよりは、そんなことを指図されるのがイヤだ。


なんてのは、体のいい言い訳。人間ってのはなんにでも言い訳をしたがるもんだ。
本当の理由はもっと単純。


絶対、うまくいかないから。


小太郎が女を作るわけがない。…攘夷志士であり、幕府に追われる人間、いつ死ぬとも知れない小太郎が恋人なんて作るわけない。以前、はっきりと口にしてたし。


『俺は女など作らん。…不幸にするだけだからな』


…そんな言葉聞かなくても、わかっていたことだった。だから今までずっと告白もせず、ただそばにいたんだ。


相思相愛になれなくてもいい、一方通行でいいから、傍にいさせてほしい。


…で、何でこんな話になったのか。それは、今日新しく入ってきた仲間が、私とヅラをみてあんな血迷ったことを言ったからだ。


…血迷ったって言うか、実は他のみんなも一度は思ったことがあるらしい(ヅラ本人には聞けないからよく私に聞きに来る)。でも入ってしばらくすると、みんな、コイツらは違うんだなってことがよくわかる、らしい。ヅラは私を女扱いしないからなァ。


それにしても、ヅラに面と向かって聞いた奴ははじめてだ。なかなか勇気のあるヤツだな…イヤ、空気が読めないだけかもしれない。


「あ、そーなんスかー、すんませんー」
「なんだその腑抜けた謝り方は!もっとしっかり謝らんか!俺に!」
「いや、そこは私に謝るところでしょ!」
「いや違う!ここはお前なんかの恋人にされたかわいそうな俺に謝るべきだ!」
「殺すぞこのヅラ野郎ォォォォ!」
「ヅラじゃない桂だァ!お前もいい加減俺に謝れェ!」
「あのー、俺もういってもいいっスか、飯、さめちゃうんでー」
「んだとゴラァァァァ!元はと言えばオメーが…!」
『ケンカはいいから早く来いやァァ!』


青筋を立てるエリザベスにそういわれて(ボード。なんか血文字っぽい)、私達は(恐怖で)黙り込んだ。っつーか青筋!?スゴクね!?



エリザベスの後に続きながらヅラは、昔はヅラなんて呼ばなかったのに、とぶつぶつひとり言を言っていた。私はそれを半歩下がって追いかける。


そう、昔は小太郎と呼んでいた。…今だって時々呼ぶけど。…でもどうして、今は『ヅラ』なのか。


「うるせーよヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ!」


友達になりたいからだ。


恋人じゃない。だからって家族でもないし、…友達にも、ホントはなれない。小太郎にとっての友は"戦友"であるから。昔浅はかだったころは、それに気付かなかったけれど。


…それでも、恋人になれないならせめて友達になりたい。だから、銀時の真似をしてヅラなんて呼んでいる。…そんなことで友達になんて、なれるわけがないのに。


笑うなら笑えばいい。…きっと、晋介あたりが聞いたら鼻で笑うに違いない。


それでも。


必死で、必死すぎていっそ滑稽でも、私は小太郎のそばにいたい。


出来るなら、一番近くに。


「……どうした?」
「え?」
「急に黙り込んで…考え事か」
「うん…まァ」
「考え事は結構だが、お前に沈んだ顔は似合わん。気持ちが悪いぞ」
「あァ?んだとコラァ」
「そうだ、お前にはその方が似合っているぞ」
「ぶっ殺す」
「イヤァァァ、助けてェェェ!」
「オメーのその声のがよっぽどキモいんだよ!」
「女がキモいなどと汚い言葉を使うな!」
「女だと思ってないくせに何を言うかね。大体私がいきなり『貴方のお声の方が気持ちが悪いです』なんて言い出したらそれこそ気持ち悪いだろうがッ」
「…確かにそうだな」
「………………いや、自分でいったけどさ。そう納得されるとなんかムカつくんだけど」
「なんだ、面倒なヤツだな」
「いやオメーほどじゃねーよ」
「なんだと!」
「っつーか二人いつまでやってんスかー」
「えっと……誰だっけ、佐藤くん?コイツにはとことん言ってやらないとさァ!」
「いや、山本っス」
「コイツは空気読めないし頭悪いけど真面目だから。真剣に言い合うのが一番なんだよ山田くん」
「イヤ、山本っス。っつーかどこが真剣?」
「もっと言ってやれ山田ァァ!」
「イヤ、山本っス」
「コイツは女のくせに言葉遣いは汚いしガサツだし…そんなんだからもてんのだぞ。なあ山川ァ」
「イヤ、山本っス。つーか俺に聞かないでください」
「何言ってんの、私実はもてるんだからね。ねェ、山内くん」
「イヤ、山本っス。っていつになったら覚えんだよテメーらはァァ!」
『オメーらいい加減にしろッ!』


エリザベスの鉄拳(ボード)に3人で頭を押さえ込む。なんだあれ、なんか錘とか入ってんじゃねーのか?メッチャ痛いんですけど。そう言い返すのも怖くて黙って歩き出す私達。


っつーか、私はもてないんじゃないよ。告白だってされたことあるんだから、それも結構な人数。最初はみんな私とヅラは付き合ってるって想ってるから何も言ってこないけど、そうじゃないってわかったら、すごいアピールして来るんだから。なんて自慢みたいになってるけど、私は一人以外興味ないから(うわ、最低)。


私が好きなのは、小太郎だけだから。


そんな言えるはずもないことを、先を歩く背中を見ながら想った。

chapter.2


今日は久々に、二人で町を歩いている。ヅラは僧侶の格好をして、錫杖持って笠をかぶって、キョロキョロとあたりに視線を泳がす。ヅラ曰く、町の様子を見るのも攘夷志士の仕事らしいのだが、こんなやつに見回られても、何の改善も見られない気がする。


ヅラと並んで歩くなんて滅多にないことだ。それは彼が攘夷志士で指名手配だからだ。ちなみに私のほうは指名手配なんてことは全然なくて、むしろ女だからか、真選組にも他にも全くのノーマークだ。それに、ヅラがわざわざ私と一緒にいるところを見られないようにしてるし。…そんな配慮、別にいらないのに。


今日はどうして一緒にいるのかというと、ちょうど夕飯の買い物に行く時間だったからだ。いくら私がガサツだと言っても、一応は女で他はみんな男。みんなで作るときもあるけど、大抵の場合ご飯は私がつくる。普段は買いだめしてあるものを使うけど、今日のお昼にサラダを出したおかげでマヨネーズがきれてしまったから買いに行く、というわけだ。別に今日じゃなくてもいいんだけど、そこは好きな人と一緒に出かけたいという乙女心だ(キモイ)。


「いやー、わるいねェ、買い物付き合ってもらっちゃって」
「まったくだ」
「オイ、そこはそんなことないっていうところだろーが。お前のためでもあんだぞ」
「市中見回りは攘夷のための大切な任務だ。その最中に買い物など…」
「あー、もういい。わかったわ。もうめんどくさいからい…『んっ…』 …ん?」


私の声に被せて、女の声が聞こえる。その声色の甘さにヅラが驚いて私を振り返る。いや、私じゃないよ。私そんな声出せないし。ってそうじゃなくって。


「アレだ」


私達のすぐ横、建物と建物の間の狭い路地で、絡み合って口付けを交わす男女。それを見た瞬間、ヅラが路地の入り口に立って、思い切り叫んだ。


「貴様等ァ!公衆の面前でなんとふしだらな真似を…!」
「あー、お邪魔しましたァー」


ヅラの着物の首根っこをつかんでずるずる引きずってその場から退却。アツアツな二人の邪魔をするんじゃありません!他人の恋愛には首を突っ込まない。それが人生うまく生きるコツだ。…って、そういう話じゃなくね?まァなんにしても、面倒ごとは避けるに限る。…まァ、ああいうのは迷惑ではあるんだけどね。


「離せ!引っ張るなァ!」
「あー、はいはいー。すんませんでしたー」
「貴様、少しも想っていないだろう!」
「想ってるわけないじゃん。あんたバカだねー、あんまり目立って真選組に見つかったらどうすんのさ」
「逃げる」
「いや、質問したわけじゃなくてね。よーするに自重しろってことよ」


そういいながらスーパーに入り、まっすぐ調味料コーナーへと歩く。ホンット、コイツはバカなんだから。


「確かに私も迷惑だと想ったけどさァ。でもああいうのはよくないよー、ああいうのは警察に任せておけばいいの」
「真選組などに任せているからあんなことになるのだろう」
「いやそうかもしれないけど」
「やはり奴らに任せてはおけん。江戸は我々の手で…


そういいながら、ヅラがマヨネーズに手を伸ばしかけたときだった。


「……あ」


同じようにマヨネーズに手を伸ばす人。それは。


「真選組!」
「テメェ、桂!」


鬼の副長、土方十四郎。


その瞬間、ヅラは私の首に腕を回して、顔の前で刀を少しだけ抜いた。


「動くな!この女を殺すぞ!」
「なッ…」
「あァ?テメーの仲間なんてどうなろうが…」
「仲間?何を勘違いしている」
「さっき話してただろーが」
「マヨネーズの場所を案内してもらっただけだ」
「なにィ?」


土方が疑いの目を向ける。ヅラは何も言わないけれど、…私を巻き込まないようにと、こんなことを言っているのはわかる。


「本当です!助けてください…!」


私は土方に向かってそう叫ぶ。あたりは騒然として、人が集まってくる。


「チッ。…オイ、そいつを放せ!」
「そうはいかん。…道を開けろ」
「…テメェ、んな真似して逃げられるとでも想ってんのか」
「貴様こそ、そんな言葉に俺が屈するとでも想っているのか?さァそこをどけ!さもなくば本当にコイツを殺すぞ!」


そういってヅラが私の首元に刀を突きつけると、土方は一度舌打ちをしてからゆっくりと後退った。私は出来るだけ"刀を突きつけられる人質"を演じるよう努める。


刀を突きつけられたままスーパーを出る。その後を、一定の距離をとって土方がついてくる。


「…逃げろ」


耳元で小さくささやかれた瞬間、私の身体はスーパーの方に突き飛ばされた。よろめく私を土方が受け止め、私を解放したヅラは一目散にその場を走り去る。


「クッ、待て桂ァ!」


私を地面に座らせると、ヅラを追いかける土方。どうやらヅラの偽証と私の演技で、私は仲間ではないと完全に思い込んでくれたようだ。


立ち上がって砂をほろっていると、野次馬の一人が遠慮がちに大丈夫ですかと尋ねてきた。私は大丈夫ですと答えて、二人が消えていった方向を見つめる。


私を安全に逃がすために、ヅラが打った大芝居。


「いらないのに」


思わず声に出してしまった。…私だけが安全に逃げられるなんて、そんなこと望んでないのに。でも、あの状況ではああするより他に逃げる方法はなかったんだ。


自由に動けるようになった今、何か私に出来ることがあるはず。

私は、だんだんちりじりになっていく群衆に紛れて、二人の後を追いかけた。

chapter.3


居場所はすぐにわかった。真選組が一箇所に集まっていたからだ。


どうやらヅラは、寂れたビルの立ち並ぶ入り組んだ路地に身を隠したらしい。昔に作られただけあって建物と建物の間が極端に狭く、それこそ猫しか入れないような隙間もある。


さっき顔を見られた土方は路地の入口にとどまり指揮を取っているようだ。


…好都合だ。


私は真選組の目を逃れて路地に入り込んだ。なるべく気配を消しながら、ヅラの姿を捜す。


捜すと言っても、面積が広い上にゴミ箱やダンボールがあちこちに転がって、身を隠すところなんていくらでもある。


…でも、これまでヅラが真選組の追手から逃れて来たのは、アイツの行動が常人から逸脱しているから。それとこれまでの方法から考えると。


幾つかのビルを回ってようやく彼の居場所を捕らえたとき、まったく期待を裏切らなかったことに思わず笑いが漏れた。


コンコン


「………入ってます」


そう、ここは男子トイレの個室。比較的早く見つけることが出来たのは、今も使われている建物があまりなかったからだ。


「逃亡中に用を足すとは、ずいぶんと余裕だねー、桂くん?」
?」


バタン、と扉が開いて、どっから持ってきたんだろうか、繋ぎの作業着を着込んだヅラが出て来た。この状況が理解できないらしく、何度も目を瞬かせている。


「何故こんなところにいる、!逃げろといったはずだ!」
「うっせーんだよ。アンタは私らのリーダーでしょ。…リーダーが一人でちょろちょろすんなよ。雑魚の相手は部下に任せておけばいいの」
「相手は真選組だぞ!お前の手に負える相手では…」
「戦おうなんて思ってないよ。…要は逃げればいいんでしょ?それならなんとかなるよ」
「な、何を言って…オ、オイ!」


まだ何か言おうとするヅラの腕を引っ張った。作業着着てるし、ちょうどいい。そして私が顔を見られたのは土方だけだから、ヤツに会わなければ何とかなる。


「まったく…女が男子便所にずかずかと入ってきおって」
「アンタしかいなかったでしょ。他の人出払ってたみたいだし」
「俺を見つける前に真選組に見つかったらどうするつもりだったんだ」
「大丈夫、私、土方にしか顔見られてないから。…っと、ちょいストップ」


大通りが見えるところまで来ると、真選組の話し声が聞こえてきた。


『いたか?』
『いや。そっちはどうだ?』
『収穫なしだ。とにかく捜せ!必ずこの周辺にはいるはずだ!』
『了解!』


言葉のあと、気配が近付いて来る。


私はヅラの腕を引っ張って、やっと2人入れるだけの狭い路地へと滑り込んだ。


「オイ、こんな所すぐに見つかるぞ!大体…ち、近いぞ!」
「大丈夫、私に任せて」
「任せられるか!さっさと逃げるぞ!」
「うるせー!黙れや!みつかんだろうが!」


言いながら前からヅラの首に手を回し、持っていたヘアクリップで長い髪を内側にまとめ上げた。短髪には見えないけど、これに笠を被せれば長髪には見えないはずだ。


「おい、髪が痛むだろうが!大体何をするつもりだ!」
「なにって、男と女が絡み合ってたら逃げない男はいないでしょう」


あ、そうだ、いるんだった。コイツはさっき逃げるどころか注意しに寄っていったんだ。


「か、絡み合うだと!下品なことを!」
『オイ、今声しなかったか?』
「!!」


どうやらヅラの声に気がついたらしい。っつーかいい大人がそんなことくらいで大げさに反応すんなよ!


「静かにしてよ、ばれるでしょ!」
「静かになどしてられるか、離せ!腕を回すなァ!」
「ちょ、黙って!」
『オイ、こっちだ!』
「っ、」


来る。 笠を深く頭に被せると、ヅラはやめろと口を開きかけた。私は咄嗟にその口をキスでふさぐ。


喧しかった足音がパッタリと止まり、あたりが急に静寂に包まれた。


私はゆっくりと唇を離すと、路地の方を振り返る。…そこにぽかんと立っている真選組隊士二人組みに向かって、にやりと、出来るだけ意地悪な顔で笑った。


「何見てるのよ」
「え…あ、あの…」
「人の逢瀬を邪魔するなんて、無粋じゃない?」
「あ…あ…えーっと…」


二人組みは後退ると、失礼しました!!と叫びながら走り去っていった。…ほーらね、これが普通の反応だよ。やっぱヅラはおかしい。わかってたことだけど。


隊士二人の姿が見えなくなったのを確認して、ヅラから離れた。…反応がない。正直抵抗されたらどうしようかと思ったんだけど、びっくりしすぎて動くことも出来なかったんだろうか。


「……今」


そうぽつんともらすと、自分の唇に触れるヅラ。…その表情は、驚いているようなそうでもないような、嫌がっているような違うような、とても読み取りづらい顔だ。


「…黙っててくれたらここまでする必要なかったのに」


別にキスなんてするつもりはなかった。自分で言ったとおり、ただ絡み合っていれば事足りたんだから。だからキスすることになったのは、ヅラの自業自得だ。


「ホラ行くよ、奴らが戻ってこないうちに!」


未だ放心状態のヅラを横目に歩き出す。黙り込む姿をただ見ているのが、辛かったから。


正直、どうしていいのかわからなかった。
私の予想では、「なんとふしだらな真似を!」とか、「女がそういうことを!」とか言うんだろうと思っていた。


なのに、そんなに真剣に考え込まれたら、困る。…いつものノリで、適当に流してくれると思ったのに。


大通り手前で立ち止まりあたりを確認するが、真選組の姿はない。振り返るとヅラはちゃんとついてきていて、普段と同じような表情をしていた。


「大丈夫みたい」
「ああ」


二人で通りに出て、出来るだけ自然に、流れに乗って歩きだす。歩調はやや速め、距離は半歩より少し近め、私達のいつもの距離だ。


…こっそりと横顔を盗み見た。その目が真剣なのは、真選組の気配を察知するのに神経を尖らせているからだ。


自業自得


そう思ったのは確かだ。…でも、本当はそうじゃなかった。正確に言うと、そうじゃない部分もあった。


…あの一瞬、たった一瞬だけど、欲が抑えきれなくなった。少しでも小太郎に近づきたいという欲が。ずっと仕舞い込んで来たのに、あの一瞬だけ表に現れた、そして、ああなった。あの一瞬、私は


小太郎とキスしたいと思った。


アレは何でもないから。忘れてください。好きでキスしたんじゃないの。違うの。


だからお願い、そばにいさせて。


振り向かない横顔に、何度も何度もそんなことを思った。


2008.08.01 friday From aki mikami.