Episode 2

安請け合いはやめましょう

Scene.1






ちょ、ちょっと待って。私は元の世界で(夢から覚めた世界で?)銀魂読んでますけどもォ、銀さんに子供がいるなんて聞いてねーぞコラァ!?ちょ、さめろさめろさめろさめろ!あでで、いででいでで、痛いよ、夢じゃないの?夢じゃないのかよコレ!?


「ぎぎぎぎぎ銀さん、かかかかかか、隠し子が…!」
「ちっげーよ!なんで今日はじめてあった奴にまで疑われてんだよ俺はァ!?何、俺ってそんなに信用ないですか!?そんな不埒な輩に見える!?銀さん危ない橋は渡らないのよ…ってそーじゃねェェェェェェ!」


逆ギレした銀さんは、私の頭をガンガンたたいてきた。あァァ、いたた、血が、血が出てるよ、噴出してるよ。噴出してるよォォォォ、死ぬ、死ぬって、死…


「なにさらすんじゃボケがァァァァァ!」
「ごふッ!!!」
「あァァ、やっちゃったァァァ!!」


あんまりたくさんたたくからついやり返しちゃったよ(テヘ)。そしたら向こう側までぶっ飛んで行って、あァ、そーいえば子供もいたんだどうしよォォォ…!!的な感じでおろおろしていると、とっさに子供をかばったらしい銀さんが砂煙の中むくりと立ち上がる。


「いってぇなオイィ!」


思ったよりピンピンした様子で私のほうに駆け寄ってきて、くわっ、と目を見開いた。うあぁ…怒ってる…


「何いきなりぶっ飛ばしてくれてんだよ!テメーは俺に恨みでもあんのかコラッ!」
「だ、だって銀さんが殴るから…」
「テメーが隠し子とか言うからだろうが!」
「違うよね!?勝手に銀さんがキレたんだよね!?確かに隠し子っていったけど、その後銀さんが勝手に殴ってきたんだよね!?」
「責任を人に擦り付けてんじゃねーよ。テメーのケツはテメーでふけ」
「イヤ、今そういう話…?」


なんか、銀さんといるとつっこんでばっかりだ。夢じゃないみたいだけどコレがもし夢だとしてもすげー幸せだ、私。もう今ここで死んでも良いかも…!(嘘です!十四郎に会うまでは!)


「…つーか、俺ら今用事あるんでー。急いでるんでー。 …じゃ」
「えェェェェ!そんなさわやかに『じゃ』とか言われても!私この世界じゃ頼れる人いないんですけど!」
「あァ?何言ってんだよ。人はみんな孤独に生きていくもんなんだよ」
「いやそういう人生観の話じゃなくって、私こっちの世界に今まさに来たばっかりで右も左も上も下もわかんないんですけど!」
「お役所にでも行って来い」
「そんな無責任なァァァァ!」
「なんっで俺がテメーのことに責任持たなきゃなんねーんだよ!」
「! …それは…」


確かに銀さんに私の面倒を見る義理はない。と言うか、私にとっては初対面じゃなくっても銀さんにとっては初対面で、しかもこんな出会い方で、めんどくせぇ女だって思われてるに違いない。


「…でも……」
「さっきもいったけどなァ、俺ァ今急いでんだよ。さっさとこいつをかーちゃんにあわしてやらねーといけねーし、他にもいろいろ面倒ごとがあんだよ」
「じゃ、じゃあ一緒に連れてってください!あの、うまくいえないんですけど…こっちもいろいろ事情があって、帰ることも出来ないし…」
「連れてくだァ?だめに決まってんだろーが。俺たちァ遊びに行くんじゃねーんだよ。テメーなんか足手まといになるだけだ!」
「でも…ここで銀さんに見捨てられたら…私…!」


私、十四郎に会えないじゃない!とは絶対口に出さずに顔を抑えて座り込んだ。泣きまねは得意なのよ!涙は女の武器って言うし、コレで銀さんもイチコ…


「じゃ」

「ええええええええ!待ってええええええ!」


私をおいてさっさと歩き出している銀さんを猛ダッシュで追いかけてしがみつく。その拍子によろめいて二人一緒に前向きに倒れて、砂埃がもくもく立ち上った。


「いつつ… テメー!いい加減に…!」


銀さんの言葉は、そこでぷっつりと途切れた。死んだ魚の目が、しっかりと私の姿を捉えている。


「…お前」
「ごめんなさい…でも…」


私はどうしてか、泣いていた。

さっきまでの嘘泣きとは違う。本気で泣いていた。どうしてこんな涙が出てくるのかわからないけど、それはどうやってもとめられなかった。


赤ちゃんだって泣いてないのに、私が泣いてるなんて、なんだか情けないし、恥ずかしい。でもとめられなかった。


…銀さんにおいていかれたら、私には死しか残されていない。


そんなこと無いはずなのに、どうしてかそんな風に思った。


「――――――…あー、くそ!しゃーねーな!」


銀さんのそんな言葉が聞こえた瞬間、腕を引っ張って立たされる。涙で歪む視界の中で、銀さんが怒ったような、困ったような表情を作った。


「事情はあとできっちり説明してもらうからな!それとパフェおごれよ!俺と、後こいつにも!」
「、うん!」


何度も頷いた私の顔を、銀さんは着物のすそでごしごしこすってきた。涙を拭いてくれてるのはわかるんだけど、ちょっと痛いんですけど。こんなところで泣くなよガキじゃねーんだから、なんて言われたから少し恥ずかしくなって、ぐっと流れそうな涙を我慢した。


不思議だな。さっきまではとめようとしても止まらなかったのに。


何はともあれ、私は銀さんと一緒に赤ちゃんのおうちに行くことになったのでした。


(あ…)
(なんだよ)
(私、お金持ってない)
(なんだとォォォォォォォォォ!!!!)


2008.04.21 monday From aki mikami.