Episode 6

まともな嘘っておかしくね?

Scene.1






さて、事件はすっ飛ばしてほっと一息の万事屋。…とは行かず、銀さん新八くん神楽ちゃん長谷川さんに、ものすごーく怖い顔で囲まれていた(定春は寝てる。私に興味ないみたい…)。


「で?」
「…で?とは………」
「オメーはナニモンだって聞いてんだよ!」
「ナニモンって…人間ダケド」
「そんなことわかってんだヨ!どこから来た誰だって聞いてるアル!」
「んー、東京からきた、です?」
「そーじゃねーよ!だからナニモンだって」
「だーから人間だって!」
「いやだから…」
「いつまでたっても終わんねーじゃねーかァァァ!」


スパパパパーン!と全員の頭をスリッパで殴りまくる銀さん。いや痛いから!私聞かれたことに答えただけだから!


「なんで僕まで叩かれなきゃいけないんですか!」
「オメーは叩きやすいからだ」
「叩きやすいって何それ!僕はモグラ叩きのモグラですか!?」
「モグラ様に失礼だー、謝れー」
「モグラ以下かァァァ!僕はモグラ以下かァァァ!」
「何言ってんだ新八ィ。モグラ様はなァ、災震の神と言って、地球の地震を全てコントロールしてんだぞ。だからモグラ様をバカにするとお前の足元で地震が起こる。オマエを生かすも殺すもモグラ様次第なんだぞーもっと敬え」
「そんなもん敬うくらいならマグマに飛び込んだ方がマシじゃァァァ!!」
「スッゲー!カッケーなモグラ様!ねェ銀ちゃん、モグラ様にはどうしたら会えるの?」
「えーっとそれは…あれだ、あの… まァ、その辺の土掘りゃ会える」
「わかんねェのかよ!!」
「オイオイお前ら、話ずれてんぞー」


3人の漫才に割り込んだ長谷川さん。あーあ、せっかく楽しんでたのに。話題を思い出した銀さんが、頭をかきながらいった。


「あー、まァ一個ずつ聞くわ。まずはなんで空からふって来たのか。俺へのいやがらせってわけじゃないだろ?」
「それは…えっと…」


なんて説明すればいいんだろう、私が聞きたいくらいなのに。だっておっさんがもっと安全に送ってくれれば地面にたたき付けられることもなかったわけだし!


「まァ、たまたま開いたのが空の上だったっていうか…」
「はァ?なんだそれ」
「ようするに、私にもよく分からないんです」
「……。 …じゃあ、次。なんで俺たちのことを知ってるのか」
「えっと… お、教えてもらった?」


ま、間違ってないよね?漫画に教えてもらったよね?…でも、正直にそれを言うのは…どうなんだろうか。とりあえずごまかしといた方がいいかな…?


「誰に?」
「おっさんに…」
「おっさんって誰だよ?」
「わかんない…」
「…………。 ……じゃあ、次。どうしてここに来たのか」
「どうして…」


それってここに来た理由、だよね?そんなの私が聞きたいよ。おっさんはわけは言えないが連れて行く、って言ってたし…


「…わかんない」
「………………。 ………じゃあ、次。 って、わかんないばっかじゃねーかァァァァァァ!!」


ものすごい勢いでテーブルにたたき付けられる。イヤ痛い!痛いから!鼻が折れるゥゥ!あああ、いい歳して鼻血が…ゴフッ


「あ、死んだ?」
「イヤ死んじゃダメでしょーが!っつーか女の子になんてことしてんの!」
「新八ィ、オメーはこいつがいかに凶暴か知らねーからんなこと言えんだよ。俺なんて吹っ飛ばされたんだぞ。ま、オメーのねーちゃんほどアレじゃねーけどな」
「アレってなんですか人の姉上を化け物みたいに。いや確かに姉上は強いですよ?僕なんか絶対勝てないし。でも女の子なんだから暴力はダメでしょ」
「女の子、ねェ…」


そう言って銀さんは私の顔をじっと見た。うわ、なんかムカつく。すっげバカにされてるんですけど。


「……一応、ってかちゃんと、女ですから」
「そーじゃなくてよー、"女の子"って言い方すっとこう可憐な感じすんじゃん。でもお前ってなんか、イノシシとか、そういう感じが…
「んだとコラァ」


ドゴォン、と顔面パンチを食らわせる。さっきのお返しも入れて計4発。え、2発多いって?だってやられたら倍返しが基本でしょ。っつーか話それすぎだから!


「あーもう!だからつまりですね…!朝起きたと思ったらそこは夢の中で、変なおっさんが理由は言えないが仕事で仕方なくお前をどっかの世界に連れてくとか言って、なんか銀さんのこととか色々教えてくれて、いきなり放り出されたんです!どうして私はこんなところにいるのか私が聞きたいくらいなんです!」


そこまで一気にまくし立てた私に、万事屋+長谷川さんは黙り込んだ。いきなりだからびっくししたのかもしれない。


「…ホントに?」
「ホントです。もし嘘ならもっとまともな嘘つきますよ」
「そりゃまーなァ」
「ねーねー!そのおっさん私のことなんて言ってたアル?」
「あ、えっと…、か、かわいくて元気な子だって!」
「銀ちゃん!悪い奴じゃないよ、正直者アル!」
「都合のいいように解釈してんじゃねェ!」
「でも…そんな話ちょっと信じられませんよね。それだったら僕たちを狙う殺し屋だ、とか言われたほうがずっと信じられますよ」
「殺し屋っつったって、まさか俺たちが狙われるような理由もねーだろ。ま、こんなヤツに狙われたところで痛くも痒くもねーけどな」
「え、何それどんくさいって言いたいわけ?」
「どんくさいっつーか、泣き虫すぎるだろ」
「装ってるかもよ?」
「バーカ、本物の涙ってのは見たらわかんだよ」
「え、そーなんですか?」
「そーなの銀ちゃん?」
「そーなのか?」
「…………そ、そんなに聞かれると自信なくなるじゃないの」
「やっぱり嘘っぱちネ。これだから男は信用出来ねーんだよ」
「オイィ、こいつだけで男全部括らないでくれる!?」
「あのー…」


別の方向にヒートアップしていく会話に割り込んだ。それぞれ体勢は変えないままこちらを振り返る。


「………私を万事屋に、置いてもらえませんか?」


…………………………


…静まり返ってしまった……。


図々しいのはわかってる!けど私今ここで放り出されたら行くとこないんだよ!


「…ちょーっとさァ」


銀さんが鼻をほじりながら(汚い!)、ジロリとにらみ付けてくる。


「…図々しくね?」
「………………わかってる」
「わかってんなら普通言わねーんじゃねーの?」
「……仕方ないじゃん、帰り方わかんないんだから」


それにまだ十四郎に会ってないし!(それかよ!)


「保健所にでも連れてってやるよ」
「私は野良犬かッ!」
「ウチにはなぁ、人間もう一人雇うような余裕はねーんだよ!」
「…雇ってくれなくていいです」
「は?」
「給料なんていらないから…!」
「あのなァ…オメーの食費とか、その他諸々は誰が払うんだ?俺か?」
「それは………」
「ワリィが他あたってくれ。住み込みのバイトとか…ま、探しゃなんかあんだろ」
「銀さん、別に今さら一人増えたって同じじゃないですか」
「え゛」
「そうアル!それに人数が多い方がバーンと派手な仕事が受けられるネ!」
「食費だって、神楽ちゃんと定春で既に15人分くらいなんですから、1人分増えたって変わりませんよ」
「どーいう意味アル」
「あ、やァ………まァ、食費の話は置いといても…、ずっといるわけじゃないでしょ?家に帰るまでって条件ならいいんじゃないですか」
「…………」


新八くんの言葉に、銀さんは腕を組んだ。うーん、うーんと唸っていると、銀ちゃん便秘ネ?と神楽ちゃんが聞いて、当然スパコーンと頭を叩かれたけど、そこの切替えしはさすが神楽ちゃん。やられたら10倍返し…ってことで、銀さんのことボコろうと拳を握る。それを片手で制しながら、わかったよ、と銀さんは言った。


「………え?」
「わかったっつってんだよ。帰る方法がわかるまではウチに置いてやる!」
「銀さん…!」
「そのかわり、食事当番しっかりやること!こいつのねーちゃんみたいなもん作ったら即追い出すからな!あーあと片付けと洗濯はオマエと新八がやること!」
「ちょ、なんで僕もですか!」
「オメー、自分のパンツとかに洗わせたいわけ?」
「なっ…!」
「そーやってハァハァしますか?はァーそれは大層なご趣味だなオイ」
「趣味じゃねェ!んなこと言うならアンタの分やらねーぞ!」
「えー!ちょ、新八それなくない?今まで通りさァ、持ちつ持たれつでうまくやってこうよォ」
「アンタ僕に全部持たしてるじゃねーか!!」
「なーにいってんの。雇ってやってるんだからそれぐらいいーだろー」
「一銭も給料払ったこと無いくせにえらそうに言うなァァァ!」


銀さんと新八くんのそんなやり取りを見ていたら、神楽ちゃんが私の隣に座って服のすそをくいくい引っ張った。振り返るとにっこり笑って言う。


「銀ちゃんあんなこと言ってるケド、ホントは結構のこと好きアル。よかったアルな」
「…うん!」


私が頷くと、銀さんが新八くんと取っ組み合いしながら「好きじゃネェ!!」といった。


いつ帰れるかわからないけど、せっかく銀魂の世界に来たんだもん、万事屋にいたほうが満喫できるよね!それに万事屋の生活ぶりも見れるし…!


銀さんと新八くんのやり取りを見ながら、神楽ちゃんが差し出してくれた酢昆布を受け取った。(センベツ、らしい。なんか違うよね。ってかマダオは?)


2008.04.25 friday From aki mikami.