Episode 7

100回聞くより1回見ろ

Scene.1






それが起こったのは、あまりにも仕事がなくてスナックお登勢でバイトをさせてもらうようになってから3日目、私が万事屋で暮らすようになってから、丁度2週間がたったある日のことだった。


「………………で、オマエなにやったわけ?」


正面に、銀さん、新八くん、神楽ちゃんと並んで座っている。その目は一様に私を蔑んでいるが、今の私は殴ってやめさせることも出来なかった。


「だからなんにもしてないって言ってるでしょー!!!」
「あーみんなそう言うんだよなァ、"犯罪者"は」
「犯罪者じゃねェェェ!」
「あーあ、俺らの中からブタ箱行きが現われるとはねー」
「見損なったネ!金はないケド根性だけはまっすぐだって信じてたのに!」
「ちげーっつってんだろ話聞けよコノヤロォォォ!」
「そうですよ、銀さん神楽ちゃん。僕らが話を聞いてあげないからこんなことに…」
「って、オメーもわかってねェェェ!」


そう、私は断じてやってない!なんて言ったらマジで犯人の言い訳みたいだけど、そうじゃない。ホントに何もしてない!


「だからさぁー!なんかわけわかんない間に連れてこられちゃったの!大体なんの容疑でつかまったかもわかんないのにィ!」
「んだよ、この後におよんでまだ言い訳か?いい加減にしろよー。ホント最近の若いもんは、根性くさりきってんなー」
「いい加減にすんのはアンタだ!」
「オーイ、テメーらがなんでここにいんだ?」


私の背後にある出入り口から、そんな声が聞こえる。これはもしや…もしや…!


「十し…じゃない、土方さん!」
「あァ?なんで俺の名前知ってんだ」


振り返るとそこには、銜え煙草にツヤ髪に凛々しい立ち姿の、愛しの愛しの土方十四郎がたっていた。


「なんだァ?コイツのこともおっさんに聞かされたのか?」
「あ、う、うん…!」
「あ?なんの話だ」
「オメーには関係ありませんー。話に入ってこないでくださいー」
「言われなくたって興味なんかねーよ!俺はコイツが持ってるはずの情報の方に興味があんだよ」
「え!十四ろ…じゃない、土方さんが私に興味があるって!」
「んなこと言ってねェだろが!気持ちワリィ女だな!」
「ひ…ヒドい…!誤認逮捕のくせに!」
「あァ?うっせーんだよコラ」
「なんだよ誤認逮捕って?」
「ひっどいんだよ!ちょっと銀さんこの回想を見てよ!」


―――ってことで、小説の常套手段、回想を発動します。*印以下を見てね!


「そういう銀八的ノリやめろォォォ!」


Scene.2


その夜私はお登勢さんのお店を手伝っていた。時間が遅くて客の入りはそれほど多くなかったけど、まだカウンターにおっさんが残っていたので話し相手をしていた。そうしたら突然けたたましい音がなって…


「御用改である!真選組じゃあァァァ!」
「! ヒィィィ!」


真選組が来た途端に、おっさんが青い顔で叫んだ。捕らえろ!という合図で一斉に飛び掛かって来る。私は咄嗟に身を引こうとしたけど…


「た、助けてェェェ!」


おっさんにしがみつかれて、そのまま真選組に一緒に御用になってしまった…。


Scene.3


「なんじゃそれェェェ!誤認逮捕もいいとこじゃねーかァァァ!」
「うるせー!半年逃げまわった売人が女と一緒にいたら、仲間だと思うだろーが!」
「んなんだからテメーらはダメなんだよ!店の人間との区別もつかねーのか?」
「ダメダメアル。やっぱクズだな」
「オメーらに言われたくねェェェ!…ったく、だからこーして釈放してやるんじゃねーかよ」
「私、土方さんがいてくれるなら釈放されなくていい!」
「うるせーオメーはしゃべんな」
「ひ、ヒドい!でも好き…!」
「「「気持ちワルッ!」」」


男3人に同時につっこまれたんですけど…!だって好きなんだもん仕方ないじゃん。


「わっかんねーなー。こんなヤツ好きなわけ?オマエ趣味ワリィなー。コイツあれだぞ、マヨネーズオタク!」
「うるせーんだよ糖分中毒が!ったく、オメーよくこんなヤツと話してられるな」
「わー、ホントに似た者同士なんだー」
「「似てねェ!」」


そう言って二人同時に振り返る。って、やっぱ似てんじゃん!と言い返したら、ぷっ、墓穴掘ってるネ、と神楽ちゃん。そうだそうだ!もっと言ったれ!激似なんだよバーカバーカ!そのとき、室内に間延びした声が飛び込んで来た。


「土方さん、まだですかィ?」
「おー総悟。コイツ連れてって…
「そ…総悟ッ!!!」
「は?」


さっきからキャストが豪華なんですけど!これで近藤さんまで現れたらもう…


「オーイ、早くしろトシ、総悟ー」
「こここ、近藤さん…!!」
「へ?」


わァァァ、し、真選組だァァァ!私がそれはもうものすごい感動を覚えていると、銀さんは心底いやそうにチッと舌打ちをした。わァ、仲悪いのね…。


「どうしたんですか?みなさん揃って…」
「オメーらには関係ねェだろ」
「この女の事情聴取でさァ」
「って言うなァァァ!」
「事情聴取?私釈放されるんじゃないの?」
「容疑は晴れたがなァ…実は例の売人がキミのことを言っていてなァ」
「そう言えばさっきさんの持ってる情報に興味があるって…」
「ま、ここじゃなんですから場所変えやしょーや。ついでに旦那たちも付き合ってもらいやすゼ」


そう言って、総悟はわたしの手錠を外してくれた。…なんだかよくわからないけど、変な事件に巻き込まれてしまったらしい。


私は真選組の3人に連れられて、その場をあとにした。


2008.04.27 sunday From aki mikami.